7月26~28日に開催した、国内最大級のマーケティング関連イベント「D3 WEEK 2017」(日経BP社主催、六本木アカデミーヒルズ)。27日16時からのセッションには、パナソニック アプライアンス社 Game Changer Catapult(ゲーム・チェンジャー・カタパルト)代表の深田昌則氏が登壇し、「パナソニックが挑むオープンイノベーション、家電部門でデジタル変革の新事業を創出する取り組み」というテーマで講演を行った。

パナソニック アプライアンス社 Game Changer Catapult 代表の深田昌則氏
パナソニック アプライアンス社 Game Changer Catapult 代表の深田昌則氏

 パナソニックアプライアンス社は、パナソニックの本流とも言える家電商品の開発・製造・販売を担当している。「いまや消費者、商品、製造プロセス、流通プロセスなど、世の中が大きく変化し、これまでのビジネスの前提が変わろうとしている。そのような変化の激しい世の中で、大企業が生き残り、かつ成長し続けるためにはどうするか。既存事業とは切り離し、新しいリーン型の商品開発プロセスを作るための活動として昨年、立ち上げたのがゲーム・チェンジャー・カタパルトだ」と深田氏は説明する。

 ゲーム・チェンジャー・カタパルトとは、新しい価値(事業)を生み出したり、加速したりするための実行型アクセラレーター。新規事業を生み出すだけではなく、それをリードする人材育成の加速も目指すという。行動指針は「UnlearnとHack」。つまり今まで学んできたことが通用しないことを認識し、固定概念をぶった切ること。「やりたいことをやりたい方法でいかに早く実現するか。つまり『リーン&スピード』が重要になる」と深田氏は語る。

 そしてもう一つ、同活動のカギを握るのが「オープンイノベーション」だ。「新しいアプローチが必要になるため、社内のリソースだけでは難しいと考えた」と深田氏は述懐する。

 母集団を形成するための方策として、まず行ったのがワークショップの開催。社内の人材のみを対象にしたものに加え、「社外のクリエイターとのワークショップも実施した」と深田氏は振り返る。そして同時に、社内のメディアを使って情報発信をし、雰囲気の醸成に努めたという。

 また発想を膨らますため、MITメディアラボ副所長の石井裕氏に講演に来てもらったり、起業家マインドを養うため、社外のコワーキングスペースを借りて、経営幹部を投資家と捉えてプレゼンテーションするピッチも行ったりした。

 「コワーキングスペースでのピッチは、経営幹部にとっても新しい知見やアイデアを考える機会となった」と深田氏。社内の会議室では、どうしても既存事業の会議の延長戦になってしまいがちになるからだ。このようなプロセスを経て事業アイデアを具体化し、そのアイデアをビジネスモデルに磨き上げ、事業化を実現するという風土づくりを行いつつ、新事業を創出していったのである。

8つの新規事業アイデアをSXSW2017で披露

 この活動を通じて生まれた8つの新規事業アイデアを、今年3月に米テキサス州で開催されたインタラクティブフェスティバル「SXSW 2017(サウス・バイ・サウスウエスト)で披露した。インテリアの一部として楽しめるディスプレーと上質なコンテンツをセットで提供するサービス「AMP(Ambient Media Player)」、おしゃれ着専用の洗濯機「MonStyle」、日本酒を最適な温度で冷たく維持する基本機能に加え、蔵元の情報や相性の良い料理を提案する「Sake cooler」などはその一例だ。

 「来場者からも意見をもらえた。このようなエンゲージメントの場を持つことは、真の社会課題解決型家電を生み出すために重要なことが分かった」と深田氏は言い切る。SXSWの後もイタリア・ミラノで開催された「ミラノサローネ」、ドイツ・ベルリンで開催された「Tech Open Air」、フランス・パリで開催された「STATION F」に参加し、そこで新しいモノを提案している企業や来場者と交流し、刺激を受けてきたという。

 「新しい価値の提案を考えているのであれば、SXSWなど新しいモノが生まれている場にどんどん参加して刺激を受けることをお勧めする」。深田氏は最後にこう語り、セッションを締めくくった。

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