「月140本の法律ニュースを配信する編集体制とビジネス上の効果について」と題し、弁護士ドットコムニュース編集長の亀松太郎氏が「Digital Marketing Week 2015」の2日目に登壇した。

 弁護士ドットコムは2005年にサービスを始めたサイト。地域や分野などから弁護士や法律事務所を探せる「弁護士検索」や、弁護士に無料で法律相談できる「みんなの法律相談」など、法律に関するトラブルの解決をサポートする。現在、約8200人の弁護士が会員登録しており、これは日本全国の弁護士の5人に1人に相当する。

 弁護士をもっと身近な存在にという理念のもと、サイトへの訪問者を増やす目的で配信されているのが、弁護士ドットコムニュースだ。2012年からサービスが開始されており、訪問者数は右肩上がりで伸びているという。

弁護士ドットコムニュース編集長の亀松太郎氏
弁護士ドットコムニュース編集長の亀松太郎氏
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 弁護士ドットコムニュースへのアクセス数を今、飛躍的に向上させているのが、「Yahoo!ニュース」だ。Yahoo!ニュースに記事を提供しているメディアは300におよび、1日当たり4000本もの記事が配信されている。弁護士ドットコムニュースも提供元の1つというわけだ。

 「弁護士ドットコムニュースの役割は“弁護士ドットコム”を身近な存在にしようというものです。そのためにYahoo!をはじめ、外部のサイトに記事を提供しています。時事ネタを法律的な視点で掘り下げ、弁護士の解説を加えて配信しています。最近では記者会見のレポート記事も提供しており、先日の東芝の社長の会見はYahoo!のトップに掲載されました。Yahoo!ニュースに載るとアクセス数は飛躍的に伸びます」(亀松氏)

 現在、月に約10本の記事がYahoo!ニュースに掲出され、月間のサイト訪問者数は約700万人にも達している。

 「Yahoo!ニュースに一度取り上げられると、クリック数は100万を超え、そのおよそ1割が弁護士ドットコムへ流入してきます。社名を知ってもらえるだけでなく、ニュースの下には関連記事が5本くらい出る。その記事タイトルがクリックされると直接、配信元に飛ぶ仕組みになっています。ここからの流入数も相当なものです」

 弁護士ドットコムニュースが始まった2012年当時は、内部編集者は亀松氏のみで外部のライターの協力を仰いでなんとかやり繰りしてきた。

常勤7人+アルバイト5人+外部ライター約10人の体制を構築

 「しかし、やはりそれでは安定しないので人を採用しました。現在は私を含めて常勤が7人。新聞社出身者と週刊誌経験者をはじめ、ネットメディアや法科大学院出身者が集まっています。それ以外に大学生のアルバイトが5人と、約10人の外部ライターという体制で記事をつくっています」

 編集会議は毎朝実施され、時事ネタをキャッチアップしていく。ポイントは「たわおや」であること。これは、「正しく」「分かりやすく」「面白く」「役にたつ」の頭文字だ。法律解説だからといって難解になりすぎないよう、この4つの視点をカバーすることを常に心がけている。

 また、昨年からスマートフォンへの対応を強化したことで、「スマートニュース」や「Gunosy」などスマホ向けアプリやFacebook、Twitterからの流入も増加している。

 「KPI(重要業績評価指標)はPV(ページビュー)ではなく訪問者数で、数と流入元を毎日チェック。記事の反応によっては関連記事を入れ替えたり、タイトルを付け替えることもあります。またFacebookやTwitterではどういう評価がなされているのかを確認しています」(亀松氏)

 現在の課題は、ニュースは見にきてくれるが、個別の法律相談まではなかなか利用してもらえないことだという。「今後は、法的問題に関心がある人に向けて法律相談に橋渡しをする、実用性を重視した別のメディアを作っていこうと考えています」(亀松氏)。