「ポルシェを知っている人は手を挙げてください」
「Digital Marketing Week 2015」の2日目の講演に登壇したポルシェジャパン マーケティング部シニアアソシエイトの志水弘樹氏が会場に語りかけると、その場にいたほぼ全員の手が挙がった。志水氏の講演のテーマは「ポルシェのプラグインハイブリッド。デジタル主導プロモーションの全貌」である。
ポルシェの代表的なモデルと言えば、スポーツカーの911だ。近年はSUVのカイエンも人気を博している。その一方で、実は日本において3種類もの市販プラグインハイブリッドモデルをラインアップする唯一のメーカーでもあった。ちなみにプラグインハイブリッドとは、充電できるハイブリッドカーであり、近距離は電気自動車として、長距離は従来のハイブリッド車として走行でき、CO2排出量や燃費を低減することが可能だ。
既に完売したスポーツカーの918スパイダーをはじめ、現在もカイエンとセダンタイプのパナメーラの2モデルにプラグインハイブリッドの設定がある。
「ラインアップが増えている中で、“ポルシェ”の名は知っているけれど、こうしたエコなモデルの存在は知られていない。今年、ル・マン24時間レースで17年ぶりに優勝したポルシェのレースカーである919ハイブリッドもプラグインハイブリッドであり、その技術が市販車に落とし込まれているという事実がまだまだ認知されていない」(志水氏)
キャンペーン予算の約6割をインターネットに投じる
そこで昨年の10月と11月、2カ月に渡り、ポルシェジャパンは「e-mobilityキャンペーン」を展開した。これは、購入見込み層への認知拡大を目指し、試乗イベントへの参加を促すものだ。テレビCMや新聞広告を皮切りに、医師向けの専用サイト「m3.com」への広告出稿、さらに自社サイトで、日本初となる複数の動画広告を交えたフルカスタマイズ仕様のインタラクティブプレロール広告を導入。同社としては異例となる、全体予算の約6割をインターネットに投じたデジタル重視のキャンペーンとした。
結果、CTR(クリック率)は従来の平均0.5%に対して約3倍、動画を最後まで見終える100%視聴の割合も6割を超えている。「m3.com」を通じてのキャンペーン応募数は、およそ200~300件の見込みに対し約1300件に達し、試乗会参加者は目標数の174組をクリアした。キャンペーン後のブランドイメージを測定したところ「先進的・革新的な」というイメージが28ポイントも上昇。また、これまでポルシェに関してあまり想起されることがなかった、「上品」「技術力がある」「高性能」などのイメージも軒並み向上したという。
最後に志水氏は今後の取り組みについて、3つのポイントを語った。
「1つ目はオンラインとオフラインが融合したマーケティング手法。世の中にはいずれかに特化したものが多いが、我々の商品はリアルな世界で使われるものであり、どちらかだけでなく、オンラインなのかオフラインなのか、融合させるのがいいのか、最適なものを探していく。2つ目はメディアに最適なコンテンツのプランニング。これまでは、例えばAという広告をリサイズして使い回していく手法が多かったが、例えば新聞とデジタルでは、スペースも見るタイミングも異なる。そのメディアにとって最適なコミュニケーションとは何なのかを突き詰めて考えていく必要がある。そして、3つ目はデータドリブンであること。経営学者の國領二郎先生が『POS(point of sales)からPOU(point of use)へ』とおっしゃっているが、時代はまさにそれだと思います」