7月25日に開幕した新イベント「D3 WEEK 2016」。「デジタル×データ×デザインの未来」をテーマに、東京・六本木ヒルズ(六本木アカデミーヒルズ)を会場に、7月29日までおよそ100の講演やパネルディスカッションを実施する。その中からデジタルマーケティング関連の講演などを選りすぐってお届けしていく。

 新イベント「D3 WEEK 2016」の2日目。開幕を彩った基調講演(パネルディスカッション)のテーマは、全体のテーマと同じ「デジタル×データ×デザインの未来」。IoT(Internet of Things)でデータが蓄積され、人工知能(AI)の進化が生活を変える時代に、デジタルマーケティングとデザインの融合は、どのようなイノベーションにつながるのか。デジタルマーケティング、AI、そしてデザインという3つの分野の専門家が意見を交わした。

(左から)モデレータを務めた日経BPベンチャーサービス局長の杉山俊幸、パネラーのUNIT_ONE代表、バルミューダ取締役の勝部健太郎氏、ドワンゴ人工知能研究所所長の山川宏氏、takram design engineeringデザインエンジニアの櫻井稔氏
(左から)モデレータを務めた日経BPベンチャーサービス局長の杉山俊幸、パネラーのUNIT_ONE代表、バルミューダ取締役の勝部健太郎氏、ドワンゴ人工知能研究所所長の山川宏氏、takram design engineeringデザインエンジニアの櫻井稔氏

 参加したのは、「MUJI passport」の開発に参加するなど、デジタルとデザインを融合したマーケティングプロジェクトを多数手がけているUNIT_ONE代表取締役の勝部健太郎氏、ドワンゴ人工知能研究所所長でAI研究者の山川宏氏、デザインとデータを融合し、地方創生に役立つ情報をビッグデータから導き出す政府のプロジェクト「RESAS」に携わった、takram design engineeringデザインエンジニアの櫻井稔氏だ。

 「ものを売るのではなく、体験や文化をデザインする」。家電ベンチャーのバルミューダ取締役でもある勝部氏は、大ヒットした高級トースター「バルミューダ ザ・トースター」のマーケティングを、こう考えて設計したという。

 パンフレットで強調したのは「トーストという“あがり”」だ。トースターの製品写真は控えめにし、おいしそうなトーストやレシピ、都会の朝の風景写真などを掲載。「おいしいトーストのあるすばらしい朝」という世界観をアピールし、ヒットにつなげた。

何が「できない」かを考える

 囲碁AIがプロ棋士に勝利するなど、AI技術が急速に発展している。山川氏は「ディープラーニング(深層学習)によりAIは“直感”が利くようになった」と解説。日本マイクロソフトの女子高生AI「りんな」は、ユーザーとの過去の対話を記憶し、それを生かした返答ができるなど「AIが自分のことを分かってくれる、という体験ができるようになった」と話す。

 AIが発展した先のビジネスはどうなるのか。新たな技術やサービスに直面した時は「何が『できないか』を考える」ことがカギになると櫻井氏は言う。「何かが便利になると、それに伴って欠けるものがある」。例えば、車の完全な自動運転が可能になれば、「車の中で何をするか」が欠けるため、それを埋める手段がビジネスになるというわけだ。

 その手段は「身体が求めるもの」「精神が求めるもの」に分けて考えればよいという。「眠い時や酒に酔った時などに自動運転を使えば、身体が求めるものは満たされ、時間が空く。そこに精神が求めるものを提供すればよい」(櫻井氏)。

 勝部氏も「時間は技術によって創造できる」と指摘。「余った時間で人間らしく、創造的に生きることができるようになる」と話す。

人間に残されるものは

 AIが絵画や小説を創作するなど、人間特有と考えられてきた芸術の分野にもAIが進出してきた。人間はすべての分野でAIに負けるのではという危機感もあるが、「AIと戦い続けるのではなく、AIを使って新たな創作をする方に進んだほうが楽しいのでは」と山川氏は言う。

 「AIが発展すると、最後には嗜好性が残る」と櫻井氏は話す。人の手で作った壺とAIがロボットで作った壺が全く同じものだったとしても、人が作ったものに「僕はこの壺を一生抱いて生きてきた」といったようなストーリーがあれば、精神的な価値が付与できる。「今後も、精神的な満足度を高めるところにビジネスが進むのでは」と櫻井氏は展望している。