Instagramでは、このハッシュタグをうまく活用することが、マーケティングを成功に導く上で重要なカギを握る。コミュニティが細分化している若年層の利用者は、自分の興味のあるハッシュタグで検索することで、好みの写真を探せる。つまり、写真を投稿する際に顧客となるターゲット層が検索しそうなハッシュタグを付けることで、目に触れる機会を増やせる。

 米国発のアパレルブランド「アメリカンアパレル」を国内で展開するアメリカンアパレルジャパンは、ハッシュタグを巧みに使うことで、フォロワーを獲得している一社だ。

 アメリカンアパレルは2013年にInstagramの使用を開始。スタッフ間でコーディネートを投稿することが浸透していたこともあり、ファッションとの相性が高いと判断したのだ。現在は、Instagramを最も注力するソーシャルメディアと位置付け、フォロワー数は17万人を超える。

アメリカンアパレルはInstagram上にクーポンを配信
アメリカンアパレルはInstagram上にクーポンを配信

 1日5投稿を目安に、新入荷商品やスタッフのコーディネート、雑誌の掲載実績などの写真を投稿している。そして、この写真を投稿する際、最適なハッシュタグを付けることを心がけている。「今、消費者の間でどんなハッシュタグが流行っているのか。流行の先端を追うことがブランディングにつながる」と石橋萌マーケティングマネージャーは言う。

 例えば、アメリカンアパレルの洋服を着て自分の写真を撮る、いわゆる自撮りの写真では「#AASELFIE」というハッシュタグが全世界的に使われているという。また、最近では国内でのInstagramの利用拡大に合わせてカタカナ表記のハッシュタグ「#アメアパ」が利用され始めたという。こうしたローカルの動向もしっかりキャッチして投稿に取り入れることで、写真が目に触れる機会を増やしている。また、「ハッシュタグを付けすぎると、かえって安っぽく見えるため、2つ程度にとどめる」(石橋氏)という配慮も怠らない。

 Instagram上に直接クーポンを配信することで、送客も実現している。フォロワーはInstagramに投稿されたクーポンの写真を店舗で見せるだけで、割り引きを受けられる。クーポンはPOS(販売時点情報管理)システムで、キャンペーン単位の利用数を把握できる。展開する際、TwitterやFacebookなどでも同時に掲載するものの、フォロワー数が多いことから「Instagram経由の集客が最も多い」(石橋氏)など、売り上げにも貢献している。

10代の利用者が9割の動画SNS

 Instagramは写真がコミュニケーションのメーン手段だが、動画に特化したSNSの利用も広がっている。スマートフォン向けゲーム事業のDonuts(東京都渋谷区)が提供する動画特化型SNS「MixChannel」はアプリのダウンロード数300万件、月間利用者数150万人、月間の動画再生回数5億5000万回を突破した。利用頻度もさることながら、アクティブ利用者の9割を10代が占めるというから驚きだ。サービスは動画や静止画の素材を組み合わせて10秒の動画を作り、投稿できるというもの。

サンリオピューロランドはいち早くMixChannelに公式アカウントを開設した
サンリオピューロランドはいち早くMixChannelに公式アカウントを開設した

 このMixChannel上に公式アカウントを開設し、動画を投稿しているのが、屋内型テーマパーク「サンリオピューロランド」を運営するサンリオエンターテイメントだ。5月8日にアカウントを開設し、動画の投稿を始めた。投稿する動画は、カップルのデートや、女性同士で遊びに来た時のシチュエーションを想定したもの。MixChannelでは、付き合った記念日や、デートで他のテーマパークに遊びに行った時などの動画を投稿する利用者が多いことから、ピューロランドでのデートを提案する動画を多く投稿している。

 活用の狙いは若年層の来場者の獲得。ピューロランドは元々、ファミリー層向けのテーマパークだったが、2013年に場内を改装し、新たに「サンリオタウン」を開設した結果、10代、20代の顧客が増え始めた。サンリオタウンはハローキティ、マイメロディ、リトルツインスターズといった人気キャラクターのアトラクションとレストランで構成されている。キティのアトラクションで、キティの世界観の中で撮影した写真をTwitterなどSNSに投稿する人が多く、クチコミで広がっていった。

 これまでと異なる顧客層が増え始めたため、昨年から本腰を入れて若年層の顧客獲得を目指したマーケティング施策に取り組み始めた。その1つが、「学パス」と呼ばれる、学生向けの割引キャンペーンだ。18歳以上の大学生は割引額が大きく、平日で800円、休日で1300円割引になる。このキャンペーンは自社サイトとSNSのみの告知にもかかわらず、「約1万人の来場につながり、実施した3月の来場者数は前年同月比で13%増となった」とサンリオピューロランド営業部サンリオピューロランド営業課の平野奈央氏は明かす。

 こうしたマーケティングをさらに推進するため、次の一手としてMixChannelの活用を始めたわけだ。現状、その効果はまだ未知数だが、動画の再生回数は8本合計で約2万回となるなど閲覧は増えている。このため、当初は8月31日までの利用を想定していたが継続を決めた。今後、「当社の動画を見た利用者が、興味を持って自らピューロランドで動画を撮影して投稿する機会を増やしていきたい」(平野氏)考えだ。

 ここまでスマートフォンを舞台に起きている若者の新しい消費行動を紹介してきた。これらの行動は、今の若者の価値観や消費の判断基準から生じたものだ。それを本誌は3つのキーワードにまとめた。

スマホネイティブ世代の消費行動を示す3つのキーワード
スマホネイティブ世代の消費行動を示す3つのキーワード

 まずは「時間消費」だ。電通のスマートフォン領域を専門とする社内横断型ユニット電通スマプラによれば、「今の若者は自分が時間を費やしている場所やサービスに対しては、投資を惜しまない傾向にある」という。ライドオン・エクスプレスは、Delivery Planetというゲームに“時間”を費やす若者の消費者心理をうまく捉え、同じ場で寿司を売ることで大きな成果に結びつけた。

 次に「レンタル消費」だ。メルカリの小泉氏は「デジタルネイティブ世代はモノの所有にこだわらない傾向がある。長く所有せずに売買しながら、消費を繰り返す人が増えている」と分析する。フリマアプリの市場が広がったことで気軽に売買を繰り返すレンタルのような消費サイクルが生まれた。消費者側から見れば、所有せずに売ることで使えるお金が見かけ上増え、これが消費を加速させているとも言える。フリマアプリに象徴される、こうした売買サイクルを提供できる企業には、新たな消費を生み出すチャンスが広がっている。

情報に他者の意見がついてくる

 最後は「プチコミュ消費」だ。「スマートフォンの普及で、常に情報に他者の意見がついてくる時代になった。こうした中、デジタルネイティブ世代は、他者の意見でも共感すればすぐに自らに取り込んでコピーし、その一方で自分の考えを持つという、2つの目線で物事を見るようになっている」(電通スマプラ)。“大人世代”からは見えにくいが、SNSの普及などで、身近なことでも共有し、共感する、ごく少人数のコミュニティ(プチコミュ)ができやすくなり、実際に多数存在している。Instagramなどを使ってモデルやタレントの価値観、ファッションなどを取り入れながら、自らの消費のスタイルを決めることは、若者にとって自然なことになっている。

 テレビからスマートフォンへという媒体の変遷だけを見ていては、このような若者の消費実態の変化は分からない。若者がモノを買う心理をきちんと理解した上で、自社の製品やサービスに最適な媒体やマーケティング支援サービスを見定めることが肝要になる。

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