7月21日から23日まで開催される日経BP社主催のマーケティング関連カンファレンス「Digital Marketing Week 2015」が、六本木アカデミーヒルズを会場に始まった。「キャンペーンマネジメント&マーケティングオートメーション」「オムニチャネル&コマース」「リアルタイムコミュニケーション」などのテーマに沿った、マーケティングの最先端を走る識者による講演を聞くため、多数のマーケティング関係者が集まり、会場は大いに盛り上がった。

 初日午前には、「データを核にマーケティングのすべてを変革する」というタイトルでパネルディスカッションが開催された。花王のデジタルマーケティングセンター センター長の石井龍夫氏、KDDIのコミュニケーション本部宣伝部担当部長、塚本陽一氏、リクルートジョブズのIT戦略室デジタルマーケティング部部長の板澤一樹氏の3人が登壇し、データドリブンなマーケティングをテーマに熱いトークが繰り広げられた。

花王のデジタルマーケティングセンター センター長の石井龍夫氏
花王のデジタルマーケティングセンター センター長の石井龍夫氏

 花王でのデータドリブンなマーケティングの実践例として石井氏が紹介したのは、「Liese」というヘアケア商品。「ブランドチームが当初、ターゲットとして設定したのは、現実にこんな人がいるのかという人物像。そこでTwitterで『髪を染めたい』というつぶやきを拾って分析したところ、当初の設定とは全く異なり、皆と同じことをしたがるような人物像になった。新たなターゲットに合わせてTwitter広告を展開したところ、ここ最近27%で安定していたLieseの市場シェアが、4年ぶりに30%の大台に乗った」と石井氏はその効果を語る。

 板澤氏も「自社に貯まっているデータだけでは、潜在層を含めた顧客の理解はできない」と同調する。実際、リクルートジョブズではアプリの提供によって、潜在層の掘り起こしに努めているという。「例えば『シフトボード』はシフト管理のためのアプリ。したがって利用者はアルバイトを実践している人で、私たちの検索サイトを利用していない人も含まれる。そのデータを分析し、マーケティングの改善に生かしている」と板澤氏は語る。

KDDIのコミュニケーション本部宣伝部担当部長、塚本陽一氏
KDDIのコミュニケーション本部宣伝部担当部長、塚本陽一氏

 また塚本氏も、「デジタルマーケティングのROI(投資対効果)を最大化するには、優等生ではない方法も必要。今、1つのチャレンジとしてシューズメーカーの『ニューバランス』と協業し、シューズ型のウエアラブルデバイスを作ることにも取り組んでいる」と言う。

 つまり宣伝部が商品作りにも関わり、その商品を購入したユーザーの情報をマーケティング活動にフィードバックしてPDCAを回していくのである。このようにデータ活用が進むと、これからはマーケティングに携わる人材においても、クリエイティブな活動が不可欠になってくるという。

 変化が求められるのはマーケティングに関わる人材だけではない。データサイエンティストも同様だ。石井氏は、現在、彼の下にいる4人のデータサイエンティストに対し、データ分析スキルに加え、「ブランドや事業をきちんと理解していること」を求めていると語る。データサイエンティストがこれらを理解していないと、せっかくのアウトプットが無駄になってしまう恐れがあるからだ。

リクルートジョブズのIT戦略室デジタルマーケティング部部長の板澤一樹氏
リクルートジョブズのIT戦略室デジタルマーケティング部部長の板澤一樹氏

 実際、塚本氏と板澤氏はそうした失敗の経験を持つという。「当社ではデータ分析をアウトソーシングしており、ブランドに理解がなかったことから使えないアウトプットが出てきた」(塚本氏)。「当社もそれで失敗したので、現在、7人のデータサイエンティストには、実際のお客さまを知ってもらうため、グループインタビューに同行してもらっている」(板澤氏)と言う。

 「例えばメリーズというおむつの広告を、実家に赤ちゃんを預けて夫とデートしている女性に見せても『うざい』と思われるだけ。お客さまにとって価値のある広告をいかにタイミングよく提供できるか。それがデータドリブンマーケティングの目指すところ」(石井氏)

 「できる限りのワン・ツー・ワン・マーケティングへの挑戦がデジタルマーケティングの醍醐味。それを実現するためにも、顧客一人ひとりの気持ちやフィーリングに合ったコンテンツの開発が必要になる」(塚本氏)

 「データの活用を基にいかに創意工夫できるか。それがカスタマージャーニーやユーザーエクスペリエンスの精度を引き上げていくことにつながる」(板澤氏)

 最後に3人は、データマーケティングを成功に導くポイントについてそれぞれこのように述べ、パネルディスカッションを締めくくった。

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