スマートフォン向けパズルゲームアプリ「Delivery Planet」の画面(左)と、同アプリから「銀のさら」の宅配寿司を購入するともらえる限定アイテム
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スマートフォン向けパズルゲームアプリ「Delivery Planet」の画面(左)と、同アプリから「銀のさら」の宅配寿司を購入するともらえる限定アイテム
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スマートフォン向けパズルゲームアプリ「Delivery Planet」の画面(左)と、同アプリから「銀のさら」の宅配寿司を購入するともらえる限定アイテム

 スマートフォン向けゲームでリアルの寿司が、しかも売り手にとって効率よく売れる。若者の間でこんな消費が実際に起こっていることを、ご存知だろうか。宅配寿司チェーンの「銀のさら」を展開するライドオン・エクスプレスの渋谷和弘デジタルマーケティング部長は「試験的な取り組みだが、マーケティングに活用しているスマートフォン向けゲーム経由の新規顧客の獲得単価(CPA)は、最も効率的な月ではチラシのポスティングと比較して5分の1になった」と、驚きを隠さない。

 スマートフォンの普及によって「若者のテレビ離れ」が加速していると言われる。博報堂DYメディアパートナーズが7月7日に発表した「メディア定点調査・2015」において、男性・女性ともに15~19歳と20代は「携帯電話・スマートフォン」が1日の中で、最も接触時間の長い媒体という結果になった。

15~19歳と20代は男女とも携帯電話・スマートフォンの接触時間が最長に
15~19歳と20代は男女とも携帯電話・スマートフォンの接触時間が最長に
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 このようにスマートフォンなどを介したネットが、若者の接触する媒体の主役へと躍り出る中、若年層へのアプローチを目的にデジタルマーケティングを実施する企業は多い。だが、媒体ばかりに気を取られ、若者がスマートフォンを使って、どんな消費行動を取るのかという観点が抜けてはいないだろうか。スマートフォンの普及、そしてスマートフォン上での新たなビジネスの登場によって、これまでにない消費行動が生まれている。その動向を理解することで、モノの売り方も変わるはずだ。

 本特集では、そうした若者の消費の最新動向を、事例や人気を集めるサービスを通じて分析することで、その実態を解き明かしていく。まずは、若者はなぜゲームでリアルの寿司を買うのか。その仕組みから紹介していこう。

ゲーム~銀のさらが新規顧客狙う、獲得単価が大幅低下

 ライドオン・エクスプレスは検索連動型広告や、DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)を活用した広告配信など、パソコン向けに様々なデジタルマーケティング施策を実施してきた。ところが、競争の激化や、消費者のネット利用がスマートフォンに移る中、「これ以上の最適化は難しく、限界がきていた」(渋谷氏)。そこで活路を見いだそうとしたのが、スマートフォンを活用した新規顧客開拓だった。

 しかしながら、出前という業態ゆえに、広告を出稿しても、消費者が空腹でなければクリックすらしてもらえない。クリックしたとしても、会員登録など注文完了までの手順が複雑なため、コンバージョンのハードルが高い。それをスマートフォンで実行させるには、単なる広告ではなく、「消費者が能動的に注文したくなる仕組みが求められる」(渋谷氏)。

 そんな折、O2O(オンラインtoオフライン)マーケティング支援を手掛けるベンチャー企業Showcase Gig(東京都港区)の新田剛史社長と知り合った。新田氏はまさにスマートフォンを活用したデリバリーの支援に乗り出そうと案を練っている最中で、渋谷氏との意見交換を通じて、ゲームを軸としたデリバリー支援サービスを思い立った。「スマートフォンでは可処分所得や時間をゲームアプリやSNSなどと奪い合う。そこで、あえてゲームを軸にしながらデリバリーを掛け合わせ、これまでとは異なる価値を生み出し、新たな市場を拓くことを目指した」(新田氏)。

 こうしてスマートフォン向けパズルゲームアプリ「Delivery Planet」が誕生した。ゲームでの課金に加え、デリバリーサービスのマーケティング支援を念頭に置いた極めて珍しいアプリだ。ライドオン・エクスプレスはこのアプリをマーケティングにいち早く採用。まずは銀のさらと、釡飯の宅配チェーン「釡寅」の2ブランドで活用している。

ゲームアプリ「Delivery Planet」でデリバリーサービスのマーケティングを支援
ゲームアプリ「Delivery Planet」でデリバリーサービスのマーケティングを支援

 Delivery Planetは2つのブロックを入れ替え、同じ形のブロックを3つ以上揃えるとブロックが消え、ステージをクリアしていく。アイテムを有効活用して有利にゲームを進められるなど、ゲーム自体の内容はそれほど目新しいものではない。異なるのは「ストア」の機能だ。通常のゲームであれば、アプリ上のデジタルアイテムを購入するのに使われるが、Delivery Planetでは「デリバリーで獲得する」というメニューを用意した。アプリ利用者がこのメニューを選ぶと銀のさらのサイトへの誘導メニューが表示される。誘導先で商品の注文を終了すると限定アイテムが手に入る。こうしてアプリ経由で注文が生じると、広告手数料が発生するアフィリエイトモデルだ。

 誘導先では別途会員登録などが必要になるため、手順としては複雑だ。それでも、しっかりと注文につながっている。「現状実施しているアフィリエイト施策の中で、新規顧客獲得数で常に上位グループに入る」と渋谷氏は明かす。CPAも「他のアフィリエイト施策の3分の1程度」(渋谷氏)と、非常に効率良く新規顧客を獲得できている。

 また、Delivery Planetでは、ゲーム上のイベントとして、特別ステージを作り、クーポンなども配布できる。ライドオン・エクスプレスは、初めて活用した3月にこうした企画を実施。その月のアフィリエイト施策としては、最も多く新規顧客を獲得できたという。獲得した顧客層は、ゲーム上で年齢を登録しておらず、精緻な分析はできないものの、「ゲームをやっている層は10~20代前半が中心。そのため、通常のネット広告よりも若い層を獲得できている可能性が高い」と渋谷氏は見る。

 今後は、顧客の継続率についても分析をする。Delivery Planetではアイテムを複数入手すると、そのアイテムの能力が高まっていく。つまり、銀のさらや釡寅で複数回注文をするほど、限定アイテムも強力になる。そのため、Delivery Planet経由で獲得した顧客は、高いLTV(顧客生涯価値)も期待できそうだ。