店舗ページでは、地図のほか、季節に応じてサングラスを薦めるなど店舗オリジナルの販促メッセージを掲載している
店舗ページでは、地図のほか、季節に応じてサングラスを薦めるなど店舗オリジナルの販促メッセージを掲載している

 2008年4月期以来8期連続の赤字決算が続く経営再建中のメガネスーパーだが、2014年4月期に24億円を超えていた経常赤字が、6月に発表した2015年4月期では、計画未達ながらも9億8700万円まで縮小した。今年に入ってからは2月を除いて単月営業黒字を達成しており、2016年4月期は6億3000万円の経常黒字を見込んでいる。

 黒字転換を牽引するのが、不採算店舗の閉鎖や販管費の大幅削減といったリストラ策と同時並行で進めているEC(電子商取引)事業の強化だ。

 EC事業の売り上げは、2013年4月期の1億900万円から2014年4月期に1億5200万円、2015年4月は2億1500万円と、前期比4割増のペースで急伸している。2013年12月のECサイトリニューアルやLINEアカウントの開設、登録者へのクーポン配信が成果として表れた。

 今年に入ってからも、ECサイト内での閲覧行動や滞在時間に応じて購入につながりやすいタイミングを学習してクーポンを提示するEmotionIntelligence(東京都渋谷区)提供の「ZenClerk」などを導入し、成約率の向上に余念がない。2016年4月期のEC売上高も前期比4割増の3億円を目指す。

 もっとも全社売り上げは2016年4月期に166億円を見込んでいるため、ECの売上比率はまだ2%に満たない水準ではある。それでもECが同社復活のカギを握ると目されているのは、実店舗への送客装置として機能しているためだ。

 まず昨年7月、メガネのフレームを自宅で5本まで試着できるサービスを開始した。試せるのはフレームのみで、クレジットカード情報を登録してもらい、7日間の試着期間を過ぎると決済する。フレームを持って最寄りの実店舗を訪れる利用が増えることを狙った取り組みだ。

2014年10月から店舗在庫確認機能 を導入
2014年10月から店舗在庫確認機能 を導入

 昨年10月には、ECサイトで全国約300の実店舗の在庫状況を確認できるシステムを設置した。在庫データは1日1回更新し、前日営業終了時点の在庫数を表示する。目下、同社EC売り上げの9割近くは、比較的安価で気軽に購入できるコンタクトレンズが占めているが、ページ閲覧はメガネも多いという。実店舗に行く前に下調べをしていることは明らかだ。購入候補の在庫が最寄り店舗にあるかどうか、事前に把握できるのは利用客にとって便利で、店舗誘導の大きなアドバンテージになる。

 在庫表示のページでクーポンを発行することで、店舗に出向く背中を押す仕組みも整えた。EC事業を統括する同社EC・WEBグループの川添隆ジェネラルマネージャーは、「在庫確認ページのクーポンを持って来店・購入しているのは新規客が多い」とオムニチャネル推進の手応えを実感している。

 今後は、実店舗で接客した約600万人の顧客データとEC顧客の購入データを連携し、各店舗レベルで来店客がECで購入した商品についても把握して、接客できるように改善していく。

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