カメラ専門店「カメラのキタムラ」を全国展開するキタムラはこれまで、EC(電子商取引)サイト経由で店舗に送客する、O2O(オンラインtoオフライン)に注力してきた。専門性の高い製品が多く、製品情報をネットで検索した上で、店頭で商品を手に取ったり、店員の説明を聞いたりして検討したいというニーズが高い。そのため、ネットで集客、店舗で購入という役割分担が効力を発揮。売上高の3分の1以上に当たる419億円には、ECが関与している。

 こうしたオムニチャネル化が進む一方、取得できるデータはチャネルの進化に追いついていなかった。例えば、ECサイトで会員登録したネット会員に、店舗での購買データはひも付いていない。また、キタムラはカメラの販売店だけでなく撮影スタジオ「スタジオマリオ」や、アップル製品の修理サービスも提供しているが、それらのサービスの利用データも統合されていない。

Tポイントの顧客への浸透を利用

 解決手段として真っ先に考えられるのが、すべてのサービスに共通したIDの発行だ。ただ、これは難しい。同社はTポイント・ジャパンの共通ポイント「Tポイント」を2006年から導入しているからだ。単に導入しているだけでなく、会計時のTカードの提示比率は7割超で、顧客の間でTポイントの利用が根付いている。これを覆すのは、システムへの投資が必要なだけでなく、顧客の大きな反発を招く恐れもありリスクが高い。

 だが、素直に見れば、既にTポイントを通じて、複数のサービスを横串にした顧客基盤が完成しているとも言える。「ためるだけではなく、ポイントを使う人の割合も高い。これほどTカードが浸透している加盟店は珍しい」(執行役員経営企画オムニチャネル推進担当の逸見光次郎氏)。この利点を生かし、TポイントのIDにひも付くデータとキタムラのネット会員のIDとを、DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)で突き合わせ、オンライン、オフライン、そしてサービスをまたいだ顧客分析に挑もうとしている。

キタムラが考える「データを活用したマーケティング」のロードマップ
キタムラが考える「データを活用したマーケティング」のロードマップ

 データ結合にはネット会員のIDを利用する。キタムラはECサイトでも購入時にTポイントを付与している。利用者がTポイントを得るには、キタムラのECサイト上でTポイントのIDを登録する必要があり、「Tポイント・ジャパン側では当社のネット会員IDとTポイントIDをひも付けて管理できている」(逸見氏)。

 IDを接続している会員の割合は、キタムラの持つ750万人の会員のうち約20%という。この約150万人の会員のデータだけをTポイント・ジャパン側から取得する。得るのはIDデータとそれにひも付くキタムラの店舗での購買データだけで、個人情報は取得しない。まずはデータを整備して顧客分析を進める。将来は、カメラを購入した顧客にプリントサービスを薦めたり、スマートフォンを購入した顧客に買い替えを案内したりなど、顧客に沿ったシナリオを設計してマーケティングを実施していく計画だ。