ガス器具メーカーのリンナイは高級コンロブランド「DELICIA(デリシア)」の製品ラインアップを8月1日に全面刷新する。

 新DELICIAに新たに加わる目玉機能が、同社としては初めてとなるスマートフォン向け専用アプリとの連携機能だ。専用アプリに登録されているレシピ情報をコンロに送るだけで、自動で火加減を調整して調理してくれる。この新たなDELICIAの発売で、前年度比で10%増の販売台数を目指す。

 今、さまざまなメーカーを苦しめているのが製品のコモディティー(汎用)化だ。製品そのものが持つ機能は、どれも似たり寄ったりになり、差異化が難しくなっている。向かう先は価格競争だ。機能が同じなら安い製品が選ばれる。リンナイの主力製品であるコンロも例外ではない。「コンロもコモディティー化に近いものが起きている。開発スピードが加速しており、ハードの機能はほかのメーカーでもすぐに追いつける」(営業本部営業企画部PR室の福本啓史室長)。

製品ラインアップを全面刷新し、スマートフォン向け専用アプリとの連携が目玉になる高級コンロブランド「DELICIA」
製品ラインアップを全面刷新し、スマートフォン向け専用アプリとの連携が目玉になる高級コンロブランド「DELICIA」

 そこで、ハードだけに頼らない、新たな顧客体験を作ることが求められた。目をつけたのが、デジタルだ。「ハードと連携したアプリを開発するなど、ソフト面を取り入れてサービス化することで、他社との差異化を図った」と営業本部営業企画部商品推進室の藤田侑紀主事は開発の狙いを説明する。

 では、どんなアプリを提供すればコンロの利用体験が向上するのか。その答えについて福本氏は、「コンロの持つ本質的な価値を突き詰めることで見えてきた」と振り返る。それは、「おいしい料理を作れる」こと。これを最大限に体験できるようにすることで、差異化につながると結論付けた。

利用データをレシピ開発に生かす

 この考えの下で開発したアプリとDELICIAを組み合わせたサービスのコンセプトを一言で表せば、「自動でプロの料理が作れる」サービスだ。アプリには、リンナイがレシピ開発担当とともに作った50のレシピが登録されている。それぞれのレシピの裏側には、自動で火を制御するためのデータが用意されている。レシピ担当開発者が調理の過程で火の加減による温度の変化などを記録して、データとして製品開発部門に渡した。

 これを基に開発者がさまざまな調整をして完成させた。9月末までには50レシピを追加する。その後は、毎週1レシピずつ追加していく予定だ。現時点では、レシピに登録された通りの分量の調理しかできないが、将来的には2人分や4人分など、分量を選択して調理できるようにする。

 消費者はこのレシピに沿ってフライパンや鍋に具材を入れ、コンロに載せる。そして、アプリとコンロをBluetoothで接続した後に、レシピ情報をコンロに送る。すると、用意されているレシピのデータに従って自動で火加減を調整し、調理が完了すると火が消えるという具合だ。

 また、リンナイはアプリ経由で調理されたレシピはデータとして蓄積する。このデータは、顧客ごとに最適なレシピのレコメンドに生かしたり、新たなレシピの開発に役立てたりして、顧客の体験のさらなる向上を目指す。

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