東芝がBtoB(企業向け)製品のブランド認知からリード獲得、そしてナーチャリングまでの統合的なマーケティングを目的として、コンテンツマーケティングに力を注いでいる。
国内に限らず、海外も対象としながらコンテンツを流通させるため、今年からビジネス特化型S N S「L i n k e d I n」や、米シェアスルーのネイティブ広告ネットワーク「Sharethrough」などの活用を始めた。ビジネスパーソンに特化したサービスや広告メニューを活用することで、効果向上を狙う。

東芝のコンテンツマーケティングの舞台となるのが、Webサイト「スマートコミュニティ」だ。同サイトは情報通信技術(ICT)を活用しながら、エネルギー、水、交通、医療、オフィス・工場など様々なインフラを統合的に制御するスマートコミュニティの実現に向けて、事業部横断型でソリューションを紹介するサイトと位置付けられている。
主なコンテンツはブログの記事、動画、インフォグラフィックス、ホワイトペーパーなど。マーケティングファネルに合わせて、各事業部から情報を収集して、コンテンツを追加するなどして運用している。
例えば、マーケティングファネルの初期段階で認知拡大や製品への関心を取ることに課題を感じている事業部があれば、動画を作成する。あるいはリードの獲得に課題を感じている事業部には、ホワイトペーパーを用意し、ダウンロードを条件にリードを獲得するといった具合だ。こうした活動を続け、この1年でブログは111記事、動画は45本、ホワイトペーパーは15本を掲載するなど、コンテンツは順調に増え続けている。
最も集客しているのはLinkedIn
スマートコミュニティへの集客には、検索サイト経由での訪問を促すSEO(検索エンジン最適化)や、ソーシャルメディアでの情報発信などの施策を主に用いてきた。ソーシャルメディアの中でも特に力を注ぐのがLinkedInだ。BtoBのマーケティング用途であれば、「LinkedInと(プレゼンテーション資料などの共有サイト)『SlideShare』を連携して活用するのが最も効果的と考えた」(営業統括部デジタル・マーケティング推進室参事の荒井孝文氏)。LikedIn上にスマートコミュニティの公式ページを設け、Webサイトに載せたコンテンツを流通させている。
SlideShareにはホワイトペーパーや動画、インフォグラフィックスを上げて、それをLinkedInでも紹介している。LinkedInのフォロワーはFacebookページの6倍超となる34万人を獲得。「ソーシャルメディアではLinkedIn経由の集客が最も多い」(荒井氏)状況になっている。
こうした結果、2014年のスマートコミュニティの訪問者数は、2013年と比較して2.3倍に、リード獲得数は6.4倍になるなど、目覚ましい成果につながっている。このコンテンツマーケティングの効果をさらに高めるため、5月から相次いで新たなマーケティングサービスの活用を始めた。
まず、LinkedInのマーケティング支援サービス「LinkedIn LeadAccelerator」。個人情報の取得に至らず見込み客リスト化できていないサイト訪問者を、見込み客に育成するものだ。「サイト訪問者の95%は、当社では名刺情報を取れていない。こうしたサイト訪問者に対して、マーケティングファネルの段階に合わせて適切な広告やコンテンツを自動配信できる」と荒井氏は説明する。
例えば、マーケティングファネルの初期段階で動画を閲覧した人がLinkedInを訪れた時、関連した新しい情報を広告として配信するといったシナリオ型のマーケティングを実現できる。「特定の期間内でサイト訪問者が触れたコンテンツや広告に合わせて、段階的に表示する広告を最適化し、リード獲得に向けて育成する」(荒井氏)というマーケティングオートメーション(MA)の側面を持つ点が特徴だ。広告の配信先はLinkedInに加え、ネットワークされている他サイトにも配信される。
まだ活用し始めたばかりのため、大きな成果につながったわけではない。現状、1週間など期間を決めて、シナリオを作り広告を配信するなど、その可能性を探っている段階だ。
CTRが1%を超えることも
LinkedInに続く新たなマーケティング施策として、ネイティブ広告ネットワークのSharethroughの活用も始めた。Sharethroughは米経済誌「Forbes」など250の媒体が導入済みで、媒体社サイトの記事一覧の見出しの間などに設置された、専用の広告枠に広告を配信できる。広告主は管理画面から流通させたいコンテンツのURLを設定するだけで、システムが見出しや記事中の写真を使い、配信する各媒体の広告枠にデザインを合わせた広告クリエイティブを自動的に生成して配信できる。

LinkedInのマーケティングソリューションが見込み客の育成なら、Sharethroughの活用目的は新規のサイト訪問者の獲得。配信先は経済ニュースサイトなど、ビジネスパーソンが多く存在する媒体に絞るものの、配信対象者は、10代など明らかにターゲット外となる層を省く程度で、広く配信している。
新規のサイト訪問者の獲得を目的とするため、動画などマーケティングファネルとしては初期段階を狙うコンテンツを中心に広告として配信する。媒体の体裁になじむネイティブ広告なので広告の認識率が高く、「広告のCTR(クリック率)が1%を超えるケースも少なくない。さらに、スマートフォンでは平均CTRが1.08%になるなど、モバイルでもサイト訪問者を獲得できていることは効果として大きい」と荒井氏は言う。
こうして、興味関心を持った人をスマートコミュニティに呼び込めば、その時に個人情報などを登録せずに離脱しても、そこからはLinkedInのリード育成サービスの出番となる。
さらに、見込み客の獲得につながれば、MAツール上で見込み客情報にひも付けて、スマートコミュニティ上の行動を分析できるようになる。こうしたデータを、意欲的な事業部に対して開示することで、営業活用に役立ててもらっている。
新しいマーケティングサービスは活用をし始めたばかりだ。ただ、ネイティブ広告が早くも高いCTRにつながるなど、サイト訪問者は順調に増えている。今後、LinkedInの育成サービスとの連携を深めることで、見込み客獲得の効率を一層高めることを狙う。