
写真・動画に特化したSNS「Instagram」の利用が国内でも広がりつつある。モデルやアパレル事業者などが先行して利用したことから女性の利用率が高く、新たな広告媒体として注目が高まる中、広告サービスの提供が始まった。最初の活用企業の1社が日清食品だ。同社は、5月にInstagram上で、即席麺「チキンラーメン」の広告を出稿。2つの広告クリエイティブをそれぞれ250万人に配信、延べ500万人にリーチした。
日清食品がInstagramの広告を活用した狙いは大きく2つある。1つは、注目度の高い新サービスを国内で最初に採用することで、広告効果に加え、付随するPR効果も獲得すること。実際、Instagramの「広告サービス開始」のリリースにチキンラーメンの広告画像が採用され、さまざまなマーケティング関連媒体がInstagramの広告掲載例としてチキンラーメンの広告を紹介した。
広告の認識率に大きな期待
もう1つがInstagram利用者の広告認識率の高さへの期待だ。「日清食品は商品広告的なディスプレイ広告はほとんど出稿していない」。チキンラーメンのマーケティングを手掛けるマーケティング部第3グループの三宅隆介ブランドマネージャーはこう説明する。国内において、チキンラーメンというブランドの認知率はほぼ100%に近いためだ。また、「画面占有率の低いディスプレイ広告では、付帯して伝えられる情報が少ない」(三宅氏)こともある。
一方、Instagramの広告は「広告」表記は付くが、利用者が投稿する他の写真と同様の体裁を持つインフィード広告の一種だ。閲覧者の目に入りやすく、広告の画面占有率も高い。また、広告サービスが始まったばかりで、利用者も“広告慣れ”していないと考えられた。そのため、「利用者が広告に集中してくれる。そこにInstagramの利用者を念頭に置いた広告クリエイティブを作って配信すれば、ブランディングにつながると期待できた」(三宅氏)。
ただし、広告クリエイティブのハードルは高かった。「Instagramは広告クリエイティブの審査がかなり厳しい。ひと目で広告と分かるような表現は、まず審査を通らない。複数案を提出して、通ったのはたったの2つだった」と三宅氏は振り返る。Instagramの世界観になじむ広告しか掲載しないという方針のようだ。ただ、それだけ厳しい審査を経ているからこそ、より自然に利用者の目に触れるとも考えられよう。
制作した広告クリエイティブの1つは、ラーメンの器やヤカン、テーブルクロスなどを組み合わせてInstagramのアイコンを再現したもの。もう1つは、テーブルの上を撮影した写真を投稿する際、Instagram上で人気のハッシュタグ「#onthetable」を参考に食卓を撮影したもの。この2つの広告クリエイティブを5月18日~6月1日にかけて、利用者1人当たり1回表示する設定で配信した。「いいね!」の数はそれぞれ1万件以上になり、「PR効果やエンゲージメント率も含めて、十分効果はあった」と三宅氏は評価する。
一方、課題も残る。広告画像には関心を持ってもらえたものの、十分な数のファンを獲得できなかった。今後、広告と合わせてハッシュタグを活用した運用などにも取り組み、ファンの増加を目指す。