人間と人工知能(AI)、どちらが優れたクリエイティブをつくれるか。これをキャンペーン展開しているのが、「お口スッキリ」のコピーでおなじみ、モンデリーズ・ジャパン(東京都品川区)の「クロレッツ」だ。

 このキャンペーンを主導する同社マーケティング本部シニアブランドマネジャーの加藤麻里子氏は、その狙いについて次のように語る。

 「昨年、国内発売30周年を迎えたクロレッツは、板ガムが普通だった当時、大人向け『粒ガム』として登場し、以降もミントタブのカテゴリー開発や、『30分間味長持ち』をコンセプトに成分を改良するなど、常にイノベーティブであり続けようとしてきた。そのブランドイメージを伝えるキャンペーンとしてイノベーティブな技術であるAIがテーマに挙がり、人間と対決させようと考えた」

過去のCMに基づきAIが大胆提示

 使用するAIクリエイティブディレクターは、マッキャンエリクソン(東京都港区)の1980年代以降生まれの有志社員「マッキャン ミレニアルズ」が開発した「AI-CD β」。「ACC CM FESTIVAL」テレビCM部門の過去10年分の受賞作品1000点近くに、独自のタグ付けをしてデータベース化したことで、お題に応じた最適なCMコンセプトをアウトプットできるように設計されている。

 AI製作を指揮したクリエイティブプランナーの松坂俊氏は、「多くのクリエイターの協力を得て、過去のCMを目的やターゲット、コンセプト、トーンなど20種類ほどの項目で分類・タグ付けし、CMを構成している要素を定義づけた。人間だと無意識に『この組み合わせはありえない』と排除しているような思考のバイアスがAIにはなく、大胆な提示をしてくれる面白さがある」と説明する。

ちなみに記者は「こちらがAIっぽい」と思ったCMに投票したが、その予想はハズレた

 キャンペーンでは、「クロレッツ ミントタブ」シリーズの特徴である「速攻お口スッキリ、10分長続き」を伝えるCMというお題のもと、人気放送作家の倉本美津留氏がAI-CD βと対決している。両者のディレクションを基に同じ制作部隊がCMを作ることで、制作面での優劣を生じにくくした。

 人間対AIのCM対決の動画は6月6日に公開され、開始1カ月時点で双方のCMとも再生回数が3万回を超え、投票数も万単位に上っているという。ユーザーは両CMを見て気に入った方に投票すると、AI-CD βがディレクションした内容が表示されるので、投票したCMがどちらだったのか知ることができる。

 7月上旬時点の投票途中経過は、僅差で接戦だという。投票受付は8月末まで。どちらが勝っても話題になることは確実だ。

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