小田急線経堂駅から徒歩10分の住宅街にある恵泉女学園中学・高等学校(東京世田谷区)が、上空から学校を撮影した動画をYouTubeで6月22日から公開している。

 校内の畑とビニールハウス、校庭に敷設したカラフルな人工芝カーペット、植栽を配置した中庭、屋上の緑化ガーデンと多目的コートなど、上空をゆっくり旋回しながら撮影したその機材こそ、今何かと話題の小型無人飛行機「ドローン」だ。

中国DJIの「INSPIRE 1」「RONIN」を使用。パナソニック「LUMIX GH4」で4K撮影し、YouTubeはフルHD画質に落として公開
中国DJIの「INSPIRE 1」「RONIN」を使用。パナソニック「LUMIX GH4」で4K撮影し、YouTubeはフルHD画質に落として公開

 米アマゾンが商品配送に活用する構想を打ち出したことで一躍注目を集めたドローンは、道路や橋梁などインフラ設備の点検や、人が立ち入れない災害現場での調査、農薬の散布、警備、測量などさまざまな業界でビジネス活用が期待されている。中でも上空からの撮影は最も基本的な用途だが、その映像をブランディング目的で配信している組織は、企業も含めてまだまだ少ない。そこに私立の女子校がいち早く名乗りを上げたのはやや意外感がある。

 ドローン企画を実施した事務長の宇田川篤氏は、「学校の魅力を分かりやすくインパクトある形で伝えるため」とその狙いを語る。偏差値50台前半で、卒業する高校3年生200人弱のうち今春は東京大学に1人、早慶に30人以上、GMARCHに120人以上が合格している、いわゆる“お買い得校”の一つ。中学入試の定員に対する志願者数の倍率も2倍前後あるものの、レベルや雰囲気が似た私立中は多く、特に経堂駅を挟んで反対側に位置する鴎友学園女子中学高等学校が近年、急速に偏差値を上げて人気校になっていることに危機意識を持っていた。

入試広報改革の一環として

 そこで2013年から入試広報改革に取り組み、2014年春に「考える恵泉」「英語の恵泉」「園芸の恵泉」という3つのアピールポイントを軸に学校サイトを刷新。スマートフォンからのアクセスがパソコン経由を超えたことから、レスポンシブWebデザインを導入した。今春の志願者数は過去最高を記録している。

 刷新以降も新しい切り口の学校紹介を模索していた折、今年のゴールデンウイーク明けに旧知のサイト制作会社アライアンス・ポート(東京都渋谷区)の幹部から「ドローンを購入したので撮影対象を探している」との打診を受け、校長とWeb委員会の承認を得て話に乗ることにした。

 撮影日は5月26日と27日の2日間。住宅密集地のため、あらかじめ所轄の警察署に連絡して承諾を得たり、授業の妨げにならないように上空撮影は日の出から生徒の登校前に済ませたり、といった配慮と制約の中、幸い晴天に恵まれ、図書館やホールなど各施設も合わせて撮影は20時間に及んだ。その映像を2分に編集して公開している。50万~60万円は下らないサービスだが、第1号案件ということもあり安価で依頼できたようだ。

 7月13日時点の再生回数は1600回超。教職員でも見たことがなかった上空からの映像は新鮮で、「学校説明会で放映すると保護者の反応がいい」(宇田川氏)という。

 上空からの映像で魅力をアピールする“ドローン広報”がこれから流行りそうだ。

この記事をいいね!する