総合化学メーカーのスリーエム ジャパンは3月にDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を導入して、データを活用したマーケティングを推進し始めた。まずは、データに基づく既存顧客や見込み客への適切なコミュニケーションを目指した活用を進めながら、将来的には事業部を横断して収集したデータと第三者の持つデータを掛け合わせることで、新たな見込み客の発見や、その見込み客への営業活動にもデータを活用する。そうして、既存顧客や見込み客に適切な情報を届けることで満足度を高めて、売り上げ拡大を狙う。
DMPの活用を推進するeコマースプロジェクト部は、2015年に新たに設置された部門だ。元々は各事業部に、取引のある「Amazon.co.jp」や「楽天市場」などの大手コマースサイトの担当者が配属されており、自社のEC(電子商取引)サイトも別部門が運営していた。これら、点在していたECの担当者を集めて、より積極的にEC事業を推進するのが同部の役割だ。
そのeコマースプロジェクト部がDMPの導入を手掛けるのは、同社がBtoB(企業向け)とBtoC(消費者向け)の両方のECを手掛けていることが背景にある。まず、購買データだけでなく、商品サンプルを提供するサービスの利用データも毎月約1万件が入ってくる。こうしたデータに加え、eコマースプロジェクト部eコマースマーケティング部の田中訓部長は「販売する製品数は約3万SKU(アイテム)に渡る。これらの商品を適切な顧客に案内するには、ECのデータだけでなく、事業部を横断したデータを集約することも必要」と考えた。
それらのデータを組み合わせて、よりマーケティングの効率を高める。そうした狙いの下、既にECサイト向けに導入していたレコメンドエンジンのサービスを拡張する形で、デジタルマーケティング支援事業のアクティブコア(東京都港区)が提供するDMPを導入した。
各事業部の理解を得ながら活用推進
とはいえ、各事業部の商品サイトは、それぞれの部門が管轄している。データを取得する上では、各事業部の理解を得ることが条件となる。そこで、各事業部のマーケティング課題を聞いて、データ活用による解決法を提案することでデータ取得の必要性を説明している。

実際、ECサイトのマーケティングへの活用にとどまらず、データを活用した営業支援にもDMPを使い始めている。DMPに蓄積したデータから、例えば、展示会に来場した後に製品サイトを閲覧した人といった特定の条件に当てはまるクラスターを作り、DMPと連携するリードナーチャリングツールからDMPで設定したクラスターの条件に当てはまる見込み客群を抽出してリスト化。そのリストを電話営業部隊に渡している。このリストを使うと、「電話からのアポイントの獲得率が非常に高い」(田中氏)と評判も上々だ。
eコマースプロジェクト部で営業先をリスト化する理由について田中氏はこう説明する。「過去のデータをコールセンター部門が見られるようにして、サイト上の行動履歴をさかのぼって見ながら電話営業することも技術的には可能だ。しかし、過去の細かな行動に基づいて、臨機応変に対応するのは高い電話対応のスキルが要求され、誰もができるわけではない。そのため、『展示会に来場』『その後製品サイトを閲覧』など大きな括りに基づいてリストを作り、渡している。そのほうが営業する側も焦点を絞って会話ができる」。
こうして、EC事業の拡大と営業支援の両面でDMPを活用しながら、活用方法をより高度化して、マーケティングの効率を高めていく。