大和ハウス工業は7月15日から、共働き世帯を対象とした建売型の戸建て住宅「家事シェアハウス」の見学会を全国約100カ所で展開する。この見学会に向けて、「家事シェア」という新しいコンセプトの浸透を目指し、5月からネット動画を活用したマーケティング施策を実施。動画の再生回数は160万回を超えた。また、配信後には、動画クリエイティブが視聴者にどのような感情の変化を及ぼすかを検証する調査にも取り組み、新たな課題の発見にもつながった。
動画施策の対象となる家事シェアハウスは、共働き世帯が増える中、夫婦間、家族間で家事を分担することで、女性の負担を減らすことをコンセプトに開発された。そのため、実際の住宅には家事を分担するのに適した導線設計などが施されている。
例えば、玄関に備え付けられた「自分専用カタヅケロッカー」は、学校や会社のロッカーをイメージして作られている。スリッパやよく使うバッグなどを個人ごとに仕分けることで、玄関やリビングに物が散らかることを防ぐ。また、玄関から洗面室などを通ってリビングに向かう導線設計にすることで、帰宅後にストレスなく洗濯物の分別などを行えるようにしている。この住宅を中部地方で先行販売したところ、好評を得たことから、本腰を入れて全国展開することを決めた。

7月に全国で実施する見学会は、家事シェアハウスとしては初めての大型の展示施策となる。この見学会に向けて大和ハウスでは、「家事シェア」というコンセプトを広く知ってもらい、集客につなげるための動画を作って、YouTubeで配信した。動画は実在する夫婦とその両親に出演してもらい、家事を分担することの大切さを伝える内容となっている。視聴者の共感を得るために、あえて台本を用意せずに自分の言葉で語ってもらうことを目指した。
動画はYouTubeの動画広告サービス「TrueView」やFacebookの広告サービスを使い、ファミリー層をターゲットに広告として配信。160万回以上の視聴につながっている。とはいえ、その視聴体験がどんな感情に訴えかけて共感を呼んだかは従来、分からなかった。「動画のクリエイティブは、ともすればクリエーターの感性が強く反映される。客観的な評価をするためのデータを求めていた」(総合宣伝部東京センター事業販促企画室の大島茂室長)。
感情に与える影響をデータで分析
このデータを取得するためのサービスとして、英アンルーリーの動画クリエイティブの調査サービスを活用した。まず、503人の被験者に動画を視聴してもらった。503人の内訳は、商品の主なターゲット層となる子供を持つ30~49歳の既婚者が153人。残りを18歳以上の国内の人口統計の年代平均に基づいて抽出した。
被験者に動画を視聴してもらいながら、複数の場面でどんな感情を抱いたかを5段階評価で選んでもらった。例えば、大和ハウスの動画は「温かみ」を感じた人の割合がターゲット層で17%と、日本の動画の平均値を10ポイント以上も上回った。また、「幸せ」な感情も8%と平均値の2倍となった。
こうした好意的な感情を引き起こした一方で、「何のブランドの動画か思い出せない」と答えた人の割合は27%と平均値を7ポイント上回った。動画で感情を揺さぶったものの、その感情の変化をブランド認知につなげられていないことが課題として明らかになった。
「制作当初は動画中に当社のロゴもなく、ブランドが伝わりにくいのではないかとクリエーターと議論した。ブランドを強く訴求する動画ではないものの、やはり動画で得た共感をうまくブランド認知につなげられていないことがデータから分かった」(大島氏)。こうした分析から得た知見を生かして、仮設を検証しながら、より効果の高い動画施策の実施を狙う。