「ぐっすり寝ないと、疲れはとれない。しっかり見えないと、レギュラーはとれない」「パンもスポーツも、工夫次第でウマくなる」──。

 女子バレーボールや競泳で全国大会の常連になっている札幌大谷高校などスポーツ強豪校が集う札幌市東区で、こんな謎の屋外広告が登場した。下の写真の通り、「視力検査表」をモチーフにしたメッセージで、だんだん文字が小さくなるため近づかないと最後まで読みにくい。


中高生の通学路で、商店や飲食店の壁面に視力検査をモチーフにした屋外広告を掲示
中高生の通学路で、商店や飲食店の壁面に視力検査をモチーフにした屋外広告を掲示
中高生の通学路で、商店や飲食店の壁面に視力検査をモチーフにした屋外広告を掲示

 こちらは、使い捨てコンタクトレンズ「アキュビュー」ブランドを提供するジョンソン・エンド・ジョンソン ビジョンケアカンパニーが視力の大切さを啓発する「スポ×コン応援団」プロジェクトの一環として6月20日から2週間、掲示したもの。なぜ札幌だったのか。同社コマーシャル・オペレーションズ&ストラテジー本部マーケティング ブランドエクイティの大森欣哉シニアマネジャーは次のように語る。

 「15~17歳の裸眼視力1.0未満の生徒の割合が多い都道府県を調べると、北海道がワースト3の常連だった。そこで視力の悩みを抱えている中高生に、部活動のスポーツと絡めたメッセージを、視力検査風に掲示することで見えづらさを実感してもらい、視力について考えるきっかけにしてほしいと考えた」

 中高生の通学路を中心に20カ所以上で展開したこの屋外広告、実は札幌・大通駅の地下通路に掲示した1点以外は、広告スペースとして販売していない一般の商店や飲食店の壁面などに掲示している。「一軒一軒、広告掲示をお願いして回った」(大森氏)。ちなみに冒頭の「ぐっすり寝ないと…」は寝具店、「パンもスポーツも…」はベーカリーショップという具合に、掲出場所に応じてオリジナルのメッセージ内容を記載するよう、工夫を凝らしている。

 コンタクトレンズを使い始めるのは中高生時代が多く、その世代にいかにアキュビューブランドに振り向いてもらえるかが課題になる。通常は、若者の利用時間が多いスマートフォン向け広告・コンテンツ施策を考えがちだが、そこはあらゆるジャンルが凌ぎを削る激戦区でもある。

あえて広告らしさを排除

 そこで同社は、一風変わった屋外広告を通じたリアルの接点づくりに力点を置いた。広告といえば視認性が重要だが、意図的にだんだん文字が小さく、見えづらくデザインし、隅に小さく「スポ×コン応援団」とアキュビューの英字ロゴを配置した。大森氏は、「『アキュビューで検索』といったいかにも広告のようなつくりにはしなかった。意識としては屋外にコンテンツを掲示するイメージ」と説明する。

 あえて広告らしさを排除したことで、「これ、何?」と興味がわいて撮影しSNSに投稿する、「スポ×コン」で検索する、あるいはアキュビューを既に利用している生徒が級友に教える、といった行動が起こることを目指した。アキュビューのブランドサイトでは、視力に不安を抱えて検索・来訪した人向けの受け皿として、スポ×コン応援団コンテンツを用意し、スポーツが上達する観点から視力の重要性とコンタクトレンズの利便性を説明している。

 一連の広告展開は、地元テレビ局やタウン誌などが街の話題として取り上げたことで、より広く知られるところとなった。広告然としたクリエイティブだったら、なかった展開だろう。中高生が能動的にスマホで投稿、検索したくなる、リアルのクチコミも誘発する、ユニークな取り組みである。

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