
玩具大手のバンダイが、「オトナ女子」と呼ばれる20~30代の女性をターゲットにした直営店「オトナ女子美日和」を、東京駅一番街の中にあるキャラクターストリート内に6月24日、オープンした。「美少女戦士セーラームーン」や「ハローキティ」「ぼのぼの」といった、同社が商品化を手掛けているキャラクター付きコスメ商品や雑貨など約200点を販売する。品揃えのうち6割が店舗限定商品。「売り上げは予想以上に好調で、バンダイ社内から『ぜひこの商品もこの店で売ってほしい』というリクエストが引きも切らない」(ライフ事業部仕入チーム事業推進担当の谷口真樹チーフ)と、滑り出しは上々だ。
実はこの直営店は、バンダイが2014年6月に開設した同名の情報提供サイト「オトナ女子美日和」から生まれた。サイトで情報を提供し、リアル店舗で販売するというオムニチャネル戦略の1つである。子ども向け玩具と男性向けプラモデルなどに強みを持つ同社にとって、20~30代の女性はいわば未踏の領域で、ぜひとも獲得したい新市場。そこで、スイーツなどを開発するキャンディ事業部、コスメ商品を開発するライフ事業部、衣料品などを作るアパレル事業部など社内の各事業部が開発した20~30代の女性向け商品を一堂に集めてアピールする情報提供の場として、同サイトをスタートさせた。
Facebookを活用してサイトの認知度向上
その際、「サイトの認知を高め、かつサイトのファンを増やし、ひいてはバンダイのファンへと育てるために、オトナ女子美日和公式Facebookを主に活用した」(谷口氏)。長女みやび、次女りよ、三女かおりというキャラクターを設定し、彼女たちがバンダイ社内を回って、商品についての開発者の思い入れや、命名や商品化の苦労談などを聞いてきて、それをFacebook上に投稿するという体裁を取って、情報の拡散と共感の高まりを狙った。Twitterも使ったが、主にFacebookを活用したのは、「閲覧した人が多くのコメントを書き込め、シェアなどの手段で情報の拡散も図りやすいから」(谷口氏)だ。
そのために、毎月1回、各事業部や社長室などから15人程度が参加する定例会議を開催。各事業部が予定している直近2カ月のオトナ女子向け新商品の発売スケジュールやプロモーション計画をすり合わせた。さらに、「この事業部がこのキャラクターでプロモーションをするなら、うちの事業部も相乗りしたい」「このキャラクターはデビュー25周年で版権元がプロモーションに積極的なので、一緒に商品化しませんか」といった情報共有も進めた。出てきた情報に基づき、Facebookの投稿内容も決めた。Facebookに投稿した内容が、自動的にサイトに蓄積され、アーカイブとしてサイト訪問者がいつでも見られるようにもした。
この結果、Facebookでいいねやコメント、シェアなどをしてくれた人を、フォロワー(閲覧した人)の数で割ったエンゲージメント率は「30~40%とかなり高い数値で推移」(谷口氏)。狙い通り、閲覧者の多くがサイトのファンになった。投稿した記事によっては、いいねの数が約2万3500なのに、シェアしてくれた人の数が多く、トータルのリーチが10万を超えることもあったという。
そうしているうちにFacebook上で「サイトで商品を紹介するだけでなく、実際にその商品を購入したい」という声が高まり、満を持してオープンしたのが、今回の直営店というわけだ。
今後は、Facebookのフォロワー数を10万人にまで拡大することを狙う。さらに今年に入ってサイト上で受け付けを始めた「オトナ女子美日和メンバーズ」という会員の登録数も増やす計画だ。「会員からの声を集めて、まだ商品化されていないキャラクターの商品化を版権元に働きかけたり、あるキャラクターでまだ商品化されていない商品を実際に商品にしたりといった“共創”ができる体制の構築を目指す」(谷口氏)。バンダイが運営するEC(電子商取引)サイト「プレミアムバンダイ」と協力して、ECサイトでオトナ女子向け商品を販売することも検討するという。