ブランド買取専門店「なんぼや」が導入したLINE査定
ブランド買取専門店「なんぼや」が導入したLINE査定

 あまり使っていないブランドもののバッグや時計、貴金属が手元にあった場合、どうするか。「ヤフオク!」に出品する、「メルカリ」などのフリマアプリを使って出品する、買取店に持ち込む、欲しい友人がいないか聞いてみる、など様々な方法がある。

 ネットオークションは、人気の商品ならば競り合いになって高値で売れる可能性があるが、買い手が付く保証はない。フリマアプリは、出品の手軽さで人気を集めているが、値付けに工夫が必要で買い手から値引きを求められることもある。買取店は、現金化を急ぎたいときには向いているが、「おカネに困っている人が行くところ」というかつての質屋のイメージから二の足を踏む人も少なくない。

 どの方法も一長一短あるが、買取店特有の抵抗感を払拭すべく、今年3月20日から「LINE査定」を導入したのが、ブランド買取専門店「なんぼや」を全国30店舗で展開するSOU(東京都渋谷区)だ。企業とユーザー間で個別かつ双方向のワン・トゥ・ワン・コミュニケーションが可能になるLINEの法人向けサービス「LINEビジネスコネクト」を採用した。

 ユーザーがなんぼやのLINEアカウントを友だち登録して、査定を希望する商品を撮影。ブランド名や購入時期などの情報と合わせて送信すると、15~20分ほどで、おおよその査定額を返信する。査定料は無料。

ダイレクトスタンプも3カ月で50万ダウンロードを突破

 アカウント開設と同時に、自社キャラクター「なん坊や」のLINEスタンプ16種類を無料で配布し始めた。LINEアプリ内のスタンプショップを介さないダイレクトスタンプだったが、開始3カ月で50万ダウンロードを突破した。一方、コストに目を転じると、ビジネスコネクトのアカウント開設初期費用やスタンプ制作・配信などで約2000万円、別途利用料として月50万円を投じている。

 SOUの嵜本晋輔社長はLINEの導入理由について、「ブランド品を売る選択肢として買取専門店というルートがあること、そして買取価格の相場が手軽かつすぐに分かることを、多くの人が日常利用しているLINEを通じて訴求したかった」と説明する。電話での問い合わせによる査定、写真添付メールでの査定はこれまでも行っていたが、そこにLINEが加わることで、査定のハードルが下がることを期待した。

 開始3カ月が経過したLINE査定は、1日80~90人、月換算で約2400~2700人の利用があり、実際に来店・売却に至るのはその12%ほど。全体では来店・売却者数が月間1万人を超えるため、LINE査定経由で来店・売却に至る顧客は現状3%に満たない規模だ。LINE査定経由ではない一般客の平均年齢が40歳前後なのに対し、LINE経由客の平均年齢は35歳と少々若く、その分、持ち込まれる商品もやや安めのものが多い。

 それでもLINE導入のメリットは大きかった。来店客のうち最終的に売却に至る割合は同社の場合70~80%だが、LINE査定経由の来店客が売却に至る割合は、それより7ポイントほど高いという。あらかじめ査定額を示して買取価格の高騰を防ぎ、利幅を縮めることをせずに、成約率を向上できているのも大きい。

 加えて、LINE査定客から買い取った商品がもたらす粗利が開始4カ月目でLINE導入コストを上回り、費用対効果の面で十分ペイするメドが付いた。今後は、「LINE査定客の来店割合を(現状の12%から)20%台に高めたい」(嵜本社長)としいてる。

 SOUは昨年12月、松任谷由実の「恋人がサンタクロース」をもじった「元カレがサンタクロース」という電車内広告を出稿し、2000件を超えるリツイートで一躍話題になった。コメ兵、大黒屋といった、販売も手がける競合と互して戦う同社にとって、LINE査定の導入は、知名度アップにも寄与しそうだ。

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