高級水栓金具メーカーの独ハンスグローエ SEがEC(電子商取引)戦略を強化している。同社は水栓器具や交換パーツなどを販売するECサイトを、欧州や米国などで展開している。そのECサイトのシステムを刷新して、ターゲットグループごとに、パーソナライズしたシナリオ型のマーケティングを実施できるようにする。データに基づく精緻なマーケティングを実施可能にするほか、営業部門とのデータの連携を強化して売り上げ拡大を狙う。既に売り上げ全体に占めるECの比率は、12~13%に達している。これを2020年には16~17%に引き上げたい考えだ。

 ハンスグローエ SEのEC事業が伸長しているのは、営業部門と密な協力体制を築いていることが大きい。同社は、建築業者などが顧客の中心となる、いわゆるBtoB(企業向け)事業者だ。ECサイトもそうした事業者を顧客としている。ところが、BtoB事業者の場合、営業部門が「自社の売り上げを作っている」という自負を抱いているケースが少なくなく、EC事業に対して「仕事を奪う存在」として反発することもある。ハンスグローエ SEも例外ではなく、EC事業が営業部門からそのような見られ方をされたこともあったという。そこで同社はEC事業を、「営業担当者がより重要な仕事に集中するための支援をするツール」(eコマースチャネル開発マネージャーのマーカス・アームブラスター氏)と位置付けることで、理解を得ている。

ハンスグローエは2020年にECの売上比率を17%に引き上げる
ハンスグローエは2020年にECの売上比率を17%に引き上げる

 具体的には顧客を3つのグループに分類して、営業とECとの役割分担を明確にしている。例えば、最も取引額が大きく、利益率も高いAグループは、営業担当者を厚く配置して、週に1回の訪問を欠かさないようにする。一方、取引額がAほどは大きくない顧客のグループは、四半期に1回程度の訪問にとどめる。その代わりに、メールやECサイトで接点を持つことで、ハンスグローエ SE製品情報との接触回数の少なさを補う。また、発注もECを通じて実施してもらう。こうして役割分担を明確にすることで、BやCのグループも顧客として取り込めるので、顧客層のすそ野が広がっているという。

ECのデータを営業も活用

 また、ECサイトのアクセスデータなどを営業部門と共有することで、営業活動の支援にも力を入れる。例えば、客先を訪問する前に、ECサイトのアクセスデータから顧客が関心を持っている製品を割り出し、その製品サンプルを営業が持っていく。ECを通じて顧客企業が必要な製品を発注できる仕組みを整えてはいるのだが、営業担当者は自社ECだけではなく、商品を卸している「Amazon」を案内することもある。プラットフォームにこだわらず最も早く製品を届けられる方法を示して、顧客のニーズに応えている。

 だが、データの活用はまだ不十分だとアームブラスター氏は言う。「現時点では、デモグラフィック情報や顧客が関心を持っている製品カテゴリーなど、比較的、大括りなセグメントでしかデータを活用できていない」。

 そこで、データの利活用を推進するために、ECのプラットフォームを刷新する。「顧客のIDごとにアクセス解析データなどをひも付けて、個別に詳細な分析を可能にする。それにより、コンバージョンに至るパスを割り出す。その分析結果を基に、よりコンバージョンに至りやすい経路を踏むようにシナリオを設定して、誘導するといった施策に取り組みたい」とアームブラスター氏は今後の展望を語る。こうしたデータドリブンなマーケティングの推進で、ECの売り上げ比率の引き上げを目指す。