顧客目線で投稿するタリーズ
推奨ランキング6位のタリーズコーヒージャパン(東京都新宿区)が運営する「タリーズコーヒー」も、顧客の目線に立ったソーシャルメディアの運用で顧客の多くに親近感を抱かせており、それが推奨ランキングで上位に入った理由と言える。



同社は2010年7月にTwitter、2011年4月にFacebook、2015年7月にInstagramの公式アカウントをそれぞれ開設。Twitterはフォロワーに話しかける「話しかけツイート」と呼ぶやや柔らかい運用を心掛け、Facebookは自社Webサイトを補完するサブメディアとしてやや堅い内容を意識し、Instagramは完全に女性を意識して美しさを追求するといった具合に、それぞれ位置付けを変えて使い分けている。
もっとも、どのソーシャルメディアも、リアル店を「コミュニティカフェ」と位置付けていた関係で、「ユーザーに寄り添い、コミュニティーを成り立たせる方針で運用してきた」(マーケティング本部マーケティング第二グループWEB・SNSチームの小林広美チームリーダー)。
具体的には、ソーシャルメディアアカウントから発信される情報に、顧客の目線に立った担当者の主観による記述が多いのが特徴だ。新商品などを紹介する際も、会社が発表するリリース文の内容をそのまま投稿せず、できるだけ担当者が実際に食べたり飲んだり体験して感じた感想を投稿する。例えば、新しいスイーツを紹介するとき、「リリース文になくてもアイスティーと一緒に食べたら合うなと感じたら、そのように投稿する」(小林氏)。
そんなタリーズコーヒーは、購入要因メディアとして「ネット利用者のブログやSNS投稿、クチコミサイト」を挙げた人が多い企業のランキングで首位に立つ。前述したTDRも、同ランキングで3位だ。ソーシャルメディアアカウントなどから発した情報でタリーズに親近感を抱いた顧客が、自らのソーシャルメディアやブログにタリーズ関連の話題を投稿しているのは、想像に難くない。
ブログやクチコミサイトに自社の好ましい情報をどう載せるか──。ユーザーに寄り添い、ユーザー目線に立った投稿を徹底してきたタリーズのやり方は、この点で参考になるのではないだろうか。
リピート購入増やしたフルグラ
最後に、購入要因メディアとしてネットニュース・情報メディアを挙げた人が多い企業を見ておこう。


トップはカルビー。これはアンケート調査直前の4月1 0日に、「ポテトチップス」の一部商品について販売を一時休止または終売すると発表した影響が大きい。昨年の台風で原材料に使う北海道産じゃがいもが不作だったための措置だ。これが報道されるや一部消費者が買いだめに走り、「メルカリ」などのフリマアプリやオークションサイトでは一時期、1袋数千円の高値が提示されるほどだった。
カルビーは消費行動スコア60.4でランキング17位だが、「繰り返し購入(利用)するようになった」にマークした購入者が最も多いブランドという強さがある。特にリピート購入されているのは人気シリアル商品「フルグラ」だ。発売開始は1991年だが、人気になったのはここ5年のこと。コーンフレークやパン食とのシェア争いではなく、ヨーグルトを合わせたアレンジレシピなどを、スーパー店頭の試食会やレシピ本、商品紹介ページのレシピコーナーで地道に提案し、新たな朝食市場を築き上げた。
「クックパッド」でアイデアレシピコンテストを開催したことをきっかけに、その後もフルグラを使ったオリジナルレシピが多数寄せられて人気が高まった。さらに、カルビーの好業績の主因としてニュースメディアで報じられ、より広い層にフルグラ人気が浸透するという上昇スパイラルに乗った格好だ。
売れ行きが横ばいで推移しているパッとしない商品でも、メディアの活用次第では大化けする可能性があることを、フルグラの成功は物語っている。自社商品の強みが生きるメディアを選定し露出を高めることで、その企業・ブランドはもう一段上のステージに到達できるはず。それにはデータをにらみながら改善を続ける不断の取り組みが欠かせない。
消費行動スコア21位~100位


調査対象:BtoC領域の主要業種から計100企業・ブランドを、業種バランスを考慮してノミネート(ネット専業企業など除く)。
アンケート調査:民間の大手リサーチ会社の協力を得てネット調査を実施。1人が20社・ブランドについて回答。回答者が知らないブランドについては調査から除外。デジタルメディア上でその企業・ブランドの商品・サービス情報を見聞きしたことがある人を抽出
(※ここでいうデジタルメディアは、「ネットニュース・情報メディア」「その企業のWebサイト、メルマガ、アプリなど」「ネット利用者のブログやSNS投稿、クチコミサイトなど」「バナー広告や記事広告」「YouTubeなどのネット動画」「その企業のLINE投稿・広告」「同Twitter投稿・広告」「同Facebook投稿・広告」「同Instagram投稿・広告」など)。
その上で情報接触をきっかけに好感度や推奨意向、購入意向を尋ねた。「購入を検討した」「購入した」「繰り返し購入するようになった」と回答した延べ人数の割合を偏差値化し、「消費行動スコア」としてランキングした。
調査期間:2017年4月20~21日。有効回答数:4120人(Twitter・Facebook・Instagramのうち1つ以上利用している人。20代、30代、40代、50~60代の男女が均等になるように回収)