(3)SNS
Facebookがリーチで凌駕、メルマガ代替の手段は4つ

 前編で紹介したはなまるうどん、中編で紹介したジローレストランシステムは、いずれも店舗を持ち、来店という最終的な成果指標を設定している企業だ。一方、メーカーの中でもメルマガの配信をやめた企業が表れ始めている。ヘッドフォン大手のオーディオテクニカ(東京都町田市)だ。メーカーの場合、ブランディングが主なデジタルマーケティングの目的となる。そのため、最終成果指標を持ちにくく、施策の効果が見えにくい。それはメルマガにおいても同様だ。

オーディオテクニカは規模でSNSと大きな差が表れたことからメルマガを休刊
オーディオテクニカは規模でSNSと大きな差が表れたことからメルマガを休刊

 ブランディングの指標としては、どれだけの人に情報が届けられたかというリーチが挙げられる。オーディオテクニカのメルマガの読者数は、最終的には1万5000人。そう多くはないが、ヘッドフォンという嗜好性の高い製品の情報について、能動的に知りたいという層を獲得できているという点では貴重な読者だ。ただ、そのリーチの面でより効果を発揮し始めたのがSNSである。

 オーディオテクニカは2011年からFacebookページとTwitterの公式アカウントを開設し、並行して活用してきた。すると、SNSはファン数が拡大する一方、メルマガは徐々に開封率が下がっていった。また、「SNSはいいね!やシェアによってリーチがさらに広がるため、1人にリーチするコスト効率が良い」(マーケティング本部広報宣伝課の近藤美絵氏)という特徴がある。Facebookページのファン数は現在9万8000人。人気の高い投稿のリーチ数は、オーガニックで5万人に達する。メルマガの刷新も検討したが、SNSとの間に大きな差があることから、休刊を決定。コミュニケーションの場をSNSへと収れんさせた。

 ここまで紹介してきたように、メルマガは活用目的によってはSNSやLINEなどに置き換えられる可能性がある。そこで、各サービスがどういった目的にとりわけ効果を発揮するかを下図にまとめた。

メールマガジンの代替手段の持つそれぞれの特徴
メールマガジンの代替手段の持つそれぞれの特徴

 例えばLINE@は、EC(電子商取引)事業や実店舗を持つ企業など、より売り上げ直結型のダイレクトマーケティングに向く。「LINE@は販促を目的に利用する企業が多い。売り上げに寄与できるかどうかで継続利用を判断するケースが多い」(LINE)。一方、ブランディングであれば、写真や動画など、さまざまなコンテンツを複合的に配信できるFacebookなどのSNSが向くだろう。

 とはいえ、やはり会員規模が大きければ大きいほど、メルマガをすぐにやめることに躊躇するのは当然だろう。せっかく集めた読者をむざむざ捨てるのは、もったいない面もある。メールマーケティングも進化を続けている。とくにBtoB(企業向け)事業者の間では、リードナーチャリングなどに本格的に取り組む企業が増加しており、むしろメールマーケティングは重要性を増している。

メルマガ改善に3つのポイント

 そこで、メールマーケティング支援のシナジーマーケティング(大阪市北区)の東日本事業部パートナーエンゲージメントグループの金沢信介マネージャーは、メルマガに課題を抱える企業に「ターゲット」「コンテンツ」「タイミング」の3つのポイントで改善を試みるよう勧める。最初のターゲットとは、個別最適化を指す。性別や年代といったデモグラフィックでの出し分けは基本だろう。

メールマーケティング改善のポイント
メールマーケティング改善のポイント

 一工夫、加えるのであれば、商品などへの関心の高い人だけを抽出するのも1つの手だろう。例えば、こんな方法だ。まず、モニターを集めるキャンペーンを実施して、商品などに関心の高い層を見極める。その上で、そういった層に絞ってメールを配信する。そうした場合には、「場合によっては開封率を8割に高められるケースも実際にある」とメールマーケティング支援のエイジア(東京都品川区)経営企画室の玉田優子チーフリーダーは説明する。

 続いてコンテンツだ。配信するコンテンツを読者のニーズに合わせて最適化する改善手法である。具体例を挙げよう。ある自動車メーカーでは、キャンペーン情報を中心にメルマガを送っていたが、メールのクリック率(CTR)は2%と振るわなかった。そこで、その自動車を使うことでライフスタイルがどう変化するかを伝えるコンテンツへと内容を変えた。毎回、「自動車で山に旅行に行った場合」といったテーマを設け、ライフスタイルを提案する。するとCTRは7%まで高まったという。

 最後のタイミングは、メールマーケティングで今、最も注目の集まるポイントだ。Webサイト上の行動をトリガーにメールを配信することが、大きな成果につながっているからだ。「サイト訪問後15分以内に配信したメールの35%は、ユーザーがすぐに開封してくれることがデータとして分かっている」(金沢氏)。

 エイジアでもこうしたWebの行動をトリガーに、リアルタイムでメールを配信できる新たなサービス「WEBCAS Auto Relations」を6月27日から提供し始める。当初はチャネルとしてメールのみに対応するが、「今後、LINEやスマートフォン向けアプリのプッシュ通知への対応を検討していく。また、将来は紙のDMも送れるようにする」と玉田氏は開発方針を語る。

 ここまで、スマートフォンの普及などで岐路に立つメルマガについて検証してきた。今後も継続するか否か。議論の際に忘れないようにしたいのは、自社にとって、どのような顧客接点が最適か、という視点だ。「脱メルマガ」は、目的ではない。それを起点に取り組むべきは、今の時代にふさわしい新しい顧客接点の設計と、再構築である。

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