“マクド愛”高まる読み物

 無印良品に次ぐ2位にランクインしたのは、日本マクドナルドが運営する「マクドナルド」だ。同社の強みは、同業で21位のモスバーガーと比較すると分かりやすい。

購入要因として、オウンドメディアが貢献したマクドナルド
購入要因として、オウンドメディアが貢献したマクドナルド

 購入要因となったメディアとしてネットニュース・情報メディアを挙げた人はややマクドナルドが上回っているものの、さほどの差はない。逆に一般ユーザーのクチコミ投稿などアーンドメディアを挙げている人はモスバーガーが15.0%で、12.5%のマクドナルドを上回っている。

 両者の間で10ポイント以上の差がついたのは、企業サイト・アプリなどのオウンドメディアだ。マクドナルドは、ダウンロード件数3300万件を超える(2017年4月時点)公式アプリが威力を発揮している。

マクドナルドが開設したオウンドメディア「BurgerLove」
マクドナルドが開設したオウンドメディア「BurgerLove」

 アプリだけではない。昨年春開設のオウンドメディア「BurgerLove」も、来店・購入意欲の向上に寄与している。「バーガー好きのためのライフスタイルマガジン」を標榜するBurgerLoveは、期間限定商品の開発経緯や定番商品の歴史、CM出演タレントが語る「マクドナルドと私」などの読み物コンテンツを公開している。

 6月に期間限定で実施した「ビッグマック祭り」キャンペーンでは、5月31日に開催した発表会当日に、ビッグマックの生みの親の紹介や、国内初出店を後押ししたのがビッグマックだったことなどのエピソードを綴った「ビッグマック誕生ストーリー」をBurgerLoveに掲載。その後、CMに出演した大島優子さんがビッグマック愛を語るインタビュー記事やCM撮影の現場レポート、CM動画を順次公開していった。

 このBurgerLoveに、公式アプリのトップ画面からワンタップでアクセスできるようになっているため、クーポンを探そうとアプリを操作している来店客の目に留まり、商品理解と来店頻度の向上につながっている可能性が高い。

 現在、展開中のキャンペーン情報の告知にとどまらず、商品の歴史や開発にかける思い、味わいへのこだわりなどをストーリーとして伝えられる自前メディアを持ったことの意義は大きい。

「君の名は。」×天然水コラボ

 消費行動スコア64.8で7位にランクインしたサントリーは、ネット広告をうまく活用して購買行動を喚起した。

購入要因で、バナー広告や記事広告が多い企業<br>(※購入者50人未満の企業は除く)
購入要因で、バナー広告や記事広告が多い企業
(※購入者50人未満の企業は除く)
「天然水」ブランド購入率(前週比)
「天然水」ブランド購入率(前週比)

 購入要因メディアとして「バナー広告や記事広告」を挙げた人が多い企業のランキングで6位に入っている。特に力を入れているのがネット動画広告だ。

 「サのつくウーロン茶、サントリー」「ウイスキーが、お好きでしょ」「恋は、遠い日の花火ではない」──。サントリーといえば、こうした印象的なキャッチコピーを採用したテレビCMを数多く生み出してきた。だが、時代は移り変わり、若年層を中心に、テレビよりもスマホとの接触率が高い層が増えている。

 サントリーもこの移り変わりに対応するため、デジタルとの親和性が高い若年層をターゲットとした広告施策では、ネットの動画広告を中心に展開するケースも増えている。中には直接的に売り上げ増加に寄与した事例もある。昨年8月26日に公開されて、空前の大ヒットとなったアニメ映画「君の名は。」とコラボレーションした「サントリー天然水」の動画広告がその1つだ。

 映画の世界観をそのままに、アニメのキャラクターたちがサントリー天然水シリーズの商品を飲んでいる動画広告を制作。Twitterの動画広告を活用して、主に若年層かつアニメに関心が高い層に絞って広告を配信した。映画の公開に先駆けて昨年8月10日前後から広告を配信し始め、20日から配信量を増やした。

 この広告がターゲット層の商品購入を喚起した。調査会社のインテージのPOS(販売時点情報管理)データで、8月22日週と29日週の10~20代男女のコンビニエンスストアでの天然水ブランドの購入率がともに前週比で4%増加。その期間はテレビCMなどは放送しておらず「ネットの動画広告が商品の動きに影響を与えることがデータ上はっきり分かり、かなり驚いた」とサントリーコミュニケーションズ宣伝部デジタルグループの坂田淳子課長は振り返る。

 また、グーグルが提供する短尺の動画広告商品「Bumper」を活用する機会が増えているという。同商品は6秒間の強制視聴で尺が短いのが特徴。缶コーヒーブランド「BOSS」やビールブランド「ザ・プレミアム・モルツ」といった主要ブランドでも配信した。「完全視聴率は高い時で90%を超える。最近は6秒視聴せずに他の動画やサイトに遷移するユーザーも一部いるが、依然として非常にコスト効率が良い」と坂田氏は評価する。動画広告の強化が、購入に影響を及ぼしたと言えそうだ。

ファミマはCM×バナーで告知

 “セブン-イレブン超え”はならなかったが、セブンに次ぐ9位にランクインしたのがファミリーマートだ。

 経営統合したサークルKとサンクスの約6000店を加えて1万8000店規模を実現し、2万店弱のセブン-イレブンを猛追している。もっとも、屋号の統合はまだ途上であり、1店舗当たりの日販もセブンとは10万円以上の差がある。これらを考えると、ファミマのこの順位はむしろ「健闘」と言ってよい。

ペイドメディアの貢献が相対的に高く出たファミリーマート
ペイドメディアの貢献が相対的に高く出たファミリーマート

 コンビニ大手3社で購入要因となるメディアを比較すると、各社の特徴が見えてくる。ネットニュース・情報メディアを挙げた人が多いのはローソン。「でか焼鳥」は今年1月の発売から5カ月間で約4500万本を売り上げる人気商品になり、メディア露出が目立った。アプリで先行するローソンはオウンドメディアでも強さを見せている。

 ペイドメディアで僅差ながらトップに立ったのがファミマだった。要因の分析は難しいところだが、本アンケート実施日の直前に当たる4月11日から、税込み700円以上の購入で人気商品が当たるクジが引ける「ワクワク春フェスタ」キャンペーンを、クレヨンしんちゃんのキャラクターを起用して実施していたことがプラスに働いた可能性が高い。

 キャンペーンは、テレビCMの放映とディスプレイ広告を同時に展開して告知したため、特に両方を見た人には、キャンペーンバナーの認知が高まりやすかったと考えられる。しんちゃんのキャラクターがメインのクリエイティブや、「700円」を強調したクリエイティブを複数用意し、対象属性別に反応の良いパターンに寄せていくといった具合に、地道にPDCAを回していたようだ。

 もっともファミマはこの1年、ファミチキ発売10周年を記念した大感謝祭や、店舗の統合記念キャンペーン、RIZAPとのコラボ商品「ファミマでライザップ」シリーズなど、話題性のある企画が目白押しだった。広告の認知度は、投下量だけでなく中身のインパクトに左右される。この6月には奇天烈な新キャラクター「ファミキチ先輩」を投入した。ニュース性、話題性でもリードしたいところだ。

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