
「ピザハット」を運営する日本ピザハット(神奈川県横浜市)は、ピザなどの注文を受ける自社Webサイトに、AI(人工知能)を使ったマーケティングツールを4月28日に導入。AIによる分析の効果検証を始めた。
これまで蓄積してきたサイト来訪者の行動履歴やCookie情報、新たな来訪者のサイト内での動きなどのデータを、AIが機械学習。Webサイト上にポップアップで表示する内容を、来訪者ごとに最適なものに自動で切り替える。そうすることで、注文完了というCVR(成約率)の引き上げと、ブランディングを図る。
実はピザハットは昨年3月、マーケティング支援会社Sprocket(東京都世田谷区)のマーケティングツール「Sprocket(スプロケット)」をサイトに導入。来訪者の離脱を防止し、CVRの引き上げに成功していた。
具体的には、新規にサイトを訪れた消費者に、会員登録の促進やお薦め商品を示すポップアップを、それぞれ複数のクリエイティブを用意してABテストを実施した。その結果、メリットを伝えて会員登録を促すポップアップを示す場合は、しなかった場合と比べてCVRが1.2倍以上になり、お薦め商品を訴求する動画を見せてLP(ランディングページ)に誘導した場合は、しなかった場合と比べてLPの閲覧数が約2倍になったという。
競合他社より早く知見を蓄積
ただし、クリエイティブの違いによる反応の差までは分析し切れなかった。なぜなら、「こんな人が訪れてきたらこのクリエイティブを示す」というシナリオを考え、実際に出し分けるところは人間の勘に頼っていたため。「出し分けが本当に最適かどうかを検証できなかった」(日本ピザハットマーケティング部の渡辺圭祐課長補佐)のだ。
そこで今回、Sprocketが提供するAI分析ツールを採用。その力を借りて、ポップアップを出し分ける精度の向上を図った。「宅配ピザ業界の競争は激しく、他社より早くAIの知見をためたい」(渡辺氏)という事情も、AI分析ツールの早期導入を後押しした。
導入して約1カ月半、手応えは上々だ。会員登録を促すポップアップの場合、来訪者の50%は表示と非表示を均等な割合(25%ずつ)とし、残り50%は表示の有無をAIの判定に任せた。両グループを比べた結果、「ピザの注文を成約と見たとき、AIに判定を任せたグループのほうが、CVRが4ポイント高かった」(渡辺氏)。
しかも、AIがあえてポップアップを表示しなかった来訪者のCVRが際立って高いことも分かった。「注文する気満々の来訪者と判断した場合、会員登録を促すポップアップを出さないほうが注文までスムーズに進むと判断したのだろう。AIのおかげで、あえて出さないことの効果も分かった」と渡辺氏は語る。
今後は、約1年間運用を続け、クリエイティブの出し分けについてAI分析の効果をさらに検証する。加えて、ピザハットが持つ会員情報とSprocketを連携させて1人ひとりに特定のクーポンを発券するなど、サイト来訪者のロイヤルティーを高めるようなサービスも順次、開発し、展開していく考えだ。