セゾン自動車火災保険(東京都豊島区)が、IoT(インターネット・オブ・シングス)を活用した新たな自動車保険関連サービスを7月1日から提供する。インターネット技術会社ACCESSと共同で、Beacon端末に加速度センサーと押しボタンを組み込んだ「つながるボタン」を開発。セゾン自動車火災の主力商品「おとなの自動車保険」に加入した契約者のうち希望者全員に、このつながるボタンを無料で配布する。

契約者は、つながるボタンを車内に設置し、スマートフォン向けアプリ「つながるアプリ」を自分のスマホにダウンロードする。クルマに乗り込むと、つながるボタンとスマホがブルートゥースでつながり、アプリが自動で起動。つながるボタンの加速度センサーが検知するクルマの走行データがアプリに伝送され、スマホのGPS(全地球測位システム)が検出した位置情報データとともに分析。運転の安全性や省エネ度、走行ルートといった「ドライブレポート」としてアプリ上に表示する。データはアプリ経由でセゾン自動車火災にも送信される。
加速度センサーが大きな衝撃を検知したり、契約者がボタンを押したりした場合は「事故」と判断され、昨年4月から契約者に提供している「ALSOK事故現場安心サポート」に基づき、総合警備保障(ALSOK)の隊員が現場に駆け付け、事故状況の 確認などをする。
セゾン自動車火災マーケティング部の水谷準・顧客ロイヤルティ戦略室長は、「IoTを生かしたこれまでにないサービスを武器に、おとなの自動車保険に加入する顧客の増加を狙う」と話す。
2019年度に加入100万件目指す
実は同社は3年前に岐路に立っていた。2011年発売のおとなの自動車保険は、事故を起こす確率の低い40~50代にターゲットを絞り込んで保険料を割安にし、順調に加入件数を伸ばしていた。しかし、同保険を含む通販型自動車保険の市場そのものが期待ほど拡大せず、「2019年度に加入件数100万件という目標の達成は、危うかった」(水谷氏)。そこで2014年下期から、新たな付加価値の研究を始めた。
こうして開発したのが、つながるボタンだ。事故発生の有無とは無関係に、日々の運転状況をドライブレコードという目に見える形で契約者に示せる。また、契約者の運転方法を診断し、急発進や急停止の減少を呼びかけて事故の予防につなげることもできる。事故が起きたときもボタン1つでALSOKのスタッフを呼べる。「これまでの自動車保険にはなかった契約者メリットを実現できた」と水谷氏は語る。
4月17日から加入予約を受け付けているが、既に約1万件の申し込みがあり、加入件数は65万件(5月末時点)になったという。今後は、つながるボタンのメリットを、どう広く知らせるかが課題になる。併せて、契約者から収集した走行データを蓄積・分析することで、新たなサービスの研究も進める考えだ。
記事掲載当初にあった「将来はデータの外販も視野に入れていきたい」との水谷氏の発言は事実ではありませんでした。お詫びして訂正いたします。[2017/6/20 22:15]