「2014年をピークに徐々に売り上げが下がり始めた。強い危機感を抱いていたが、自社のブランドの強みを見失い、手の打ちようがなかった」

 アパレルSPA(製造小売業)のジュン(東京都港区)ロペピクニック事業部ECの坂井拓郎氏はこう振り返る。ジュンは「アダム エ ロペ」「ロペピクニック」「メゾン キツネ」といった、さまざまなブランドを展開するアパレル企業。坂井氏の所属するロペピクニックは、テレビCMの放送により新規顧客が一気に増えて売り上げが急拡大したものの、やがてリピート率が低下。売り上げも減少に転じた。やがては落ち着くと楽観していたが、「1年半がたっても、リピート率が下げ止まらなかった」(坂井氏)。

 対策を練ろうにも、原因が分からない。そこで、顧客がブランドに対して感じている価値や、足りないと思われている点は何かを、調査から洗い出すことにした。

 調査ではNPS(ネット・プロモーター・スコア)及びNPSのスコアにプラス/マイナスの影響を与えている項目の分析に取り組んだ。

NPSに影響を与える項目を分析

 この取り組みでは、アンケート調査で「ファッション性」「品揃え」「価格」「商品」「接客」など、全部で20項目について質問。NPSのプラス/マイナスに影響を与えている項目を分析した。調査にはEmotion Tech(東京都中央区)の協力を得た。

掲載を増やし始めた、スタッフをモデルにしたコーディネート写真
掲載を増やし始めた、スタッフをモデルにしたコーディネート写真

 調査結果は意外だった。NPSに影響を与えたのは、プラスもマイナスもともに「接客」。マイナスの影響を与えたのは、店舗での支払いだった。マイナス要因を分析する中で着目したのが、「ポイントカードを出すのが面倒」という点だ。実はこの時、ジュンではスマートフォン向けアプリの開発を検討しており、ポイントカード機能を搭載するかで意見が分かれていた。調査の中で浮かび上がった意見が後押しとなり、ポイントカード機能の搭載が決まった。アプリは2月に提供を始めている。

 一方、プラスの影響を与えていたのは接客における親身な態度、親しみやすさだった。そこでデジタルを活用して、スタッフのコーディネートをより広く参考にしてもらう施策を始めた。具体的には、スタッフをモデルにしたコーディネート写真を、2月から自社EC(電子商取引)サイトに多数掲載するようにした。その結果、全商品のPV(ページビュー)が2倍に上昇。購入率も高まっている。

 こうした対策を打った結果、課題となっていたリピート率が3月に下げ止まり、わずかだが上昇に転じ始めた。今後はロイヤルティーの高い顧客の傾向を洗い出し、既存顧客を優良顧客へと引き上げる施策に取り組んでいく考えだ。

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