トリドールホールディングスは、うどんチェーン「丸亀製麺」のスマートフォン向けアプリの全面刷新に向けて開発を進めている。開発の指揮を執るインフォメーションテクノロジー部の村上卓也部長は、「詳しくはまだ言えないが、次世代のアプリでは顧客の購入データなどをすべて取れるようになる」と明かす。

現行のアプリは、割引クーポンの提供と引き換えに、レシートに印刷されたQRコードを顧客にスマホで読み込んでもらい、購入データを取得している。アプリの刷新に合わせて、MA(マーケティングオートメーション)ツールも導入した。刷新に先駆け、3月には磁気のプリペイドカード「丸亀製麺カード」のサービスも終了した。今後は、アプリを顧客とのコミュニケーションの中枢に据え、顧客データの基盤として運用する。
トリドールがアプリの本格活用を始めたのは、昨年6月のこと。既存顧客の来店頻度を高め、売り上げを増やすのが目的だ。「プリペイドカードの利用データを分析したところ、来店頻度が月1回という顧客の割合が高かった。この顧客にリピートを促せば、売り上げを2~3%高められると踏んだ」(村上氏)。
ところが、それまで同社は会員基盤を有効活用できておらず、リピートを促すマーケティング手法にほとんど取り組めていなかった。メールマガジンやモバイル会員は仕組みとしてはあったが、ほぼ手付かずの状態。アプリを提供していたものの、エンターテインメント要素が強いためか継続利用者は少なく、月間利用者数は1万人未満にとどまっていた。
購入データを取得する工夫
そこで、スマホ向けアプリを顧客基盤の柱に据え、アプリで収集した顧客のデータに基づいて来店促進策を講じる戦略を打ち立てた。ただ、問題が1つあった。それはいかにして顧客の購入データを取得するかだ。リピートを促すために顧客の嗜好に応じた情報を発信するには、購入データが非常に重要になる。
ところが、丸亀製麺のレジ業務は流れ作業。来店者がセルフサービスでうどんを受け取り、天ぷらなどの付け合わせを選んでレジへと進む。会計時にバーコードスキャンなどの作業が生じると、作業が遅れて顧客を待たせてしまい、ファストフードとしての価値が低下しかねない。そこで、レシートに印刷したQRコードを顧客自身がアプリで読み込む機能を付けた。データ提供の代わりにランダムで当たるクーポンを提供し、顧客の購入データを取得している。
取得したデータの活用も試験的に始めている。例えば、直近の数日に親子丼を食べた人に対してうどんとのセットメニューを割り引くクーポンを配信する。来店頻度が下がっている顧客に対して割引率の高いクーポンを配信するといった具合だ。どういった特典が集客につながるのか、「半額」と「50円引き」のどちらの文言が効果的か、といったテクニックも含めて効果検証を進めている。
アプリからの情報で来店した顧客に占める新規率やクーポン利用分などを考慮し、売り上げへの貢献度や増益効果などを検証。収益改善に十分寄与していると判断した。今後はアプリの全面刷新を機に、アプリ活用マーケティングをさらに推進すべく、アクセルを踏む。