シリアルの代表的なブランドであるケロッグは昨年、「オールブラン」シリーズ誕生100周年のプロモーションに際し、デジタル施策を強化した。オールブランを愛用する「アンバサダー」を募集し、ファンの声として商品の魅力を発信したことなどが奏功し、シリーズの売り上げは前年比7%増、シリーズ4商品で最も注力した「ブランフレーク フルーツミックス」は同25%増の伸びをみせた。
消費者の声を販促に生かすアンバサダープログラムを導入したことについて、日本ケロッグ(東京都港区)マーケティング部グループマネージャーの五味田里美氏はこう語る。
「オールブランについては課題が2つあった。1つは、食物繊維が豊富だけど独特な味で『あまりおいしくない』という印象をお持ちの方が多いこと。もう1つは、トクホ商品のオールブランでも表現できる効果効能には限度があること。一方、購入者のリピート率が高く、友人に積極的に勧めてくれるファンが多い商品であることも調査から把握できた。そこで、メーカーが発信するより、ファンの方に語っていただくほうが届きやすいと考えた」
メーカー発信からファン発信へ
昨年2月、アジャイルメディア・ネットワーク(東京都渋谷区)のアンバサダー活性化支援プログラムを導入し、「オールブラン アンバサダー プログラム」を開設。Twitterアカウントやブログを持つアンバサダー1000人を募集した。商品モニター体験や抽選でアンバサダー限定イベントに招待する特典を付けたところ、想定を大幅に超える申し込みがあり、現在3800人を超えるアンバサダーが登録している。
商品モニターには、オールブランで摂れる食物繊維量やレシピ案などをまとめた小冊子「ワタシ スッキリ ブック」を同封した。商品に対する理解を深めた上で感想を書いてもらうことで、好意的なクチコミとなって発信された。こうした生の声はPOP(店頭広告)にも採用し、お通じに悩む女性らに訴求している。料理研究家を招いた体験型のイベントも盛況で、体験レポートのみならずアンバサダー各々が発案したオリジナルレシピが投稿、シェアされるようになった。
ツイートやブログ投稿1件当たりに単価を設定してそのリーチ数から弾き出す広告費換算額は、「当初想定を大きく上回った」(五味田氏)。
デジタル施策が成果を得たことで、今年も広告宣伝のデジタルシフトを進めている。狙いは、少子化の進行で縮小気味の「コーンフロスティ」などお子様向け商品の需要開拓だ。今年2月に「ケロッグママ アンバサダー プログラム」を立ち上げたほか、「ドラえもん」の新作映画とコラボしたAR(拡張現実)フォトフレーム、オードリーの春日さんが「グレイトモーニングダンス体操」を踊るYouTube動画などを展開している。
アンバサダーの好意的な声やレシピ案など、蓄積されていくコンテンツは時間の経過とともに威力を発揮しそうだ。