東急モールズデベロップメント(東京都渋谷区)から今年4月に分社し、「109」ブランドでSHIBUYA109などの商業施設を運営するSHIBUYA109エンタテイメント(同)が、MA(マーケティングオートメーション)ツールを使ったメールマーケティングで成果を上げている。
昨年10月に、運営する各商業施設のWebサイトとEC(電子商取引)サイトを、ECサイト「SHIBUYA109 NET SHOP」に統合する形で刷新。同時にバリューコマースが提供するMAツール「R∞(アール・エイト)」を導入して、ECサイトの売り上げ増を図った。
刷新前のECサイト「SHIBUYA109 NET SHOP」は、オーガニック検索から流入する来訪者が多く、低コストで集客ができていた半面、商品を購入するのは最初の1回だけでリピート購入をしてくれない顧客が大半だった。初回購入時にメールアドレスを登録した顧客に対して、メールマガジンを配信してリピート購入を促していたが、結果がついてこなかった。サイトにうまく集客できていたものの、売り上げ増の機会を逸していた恰好だ。
そこでECサイトで商品を購入した顧客に、MAツールを使って改めてメールマガジンでアプローチし、「顧客と109との関係性を強化する」(オムニチャネル運営事業部渋谷運営部の澤邊亮担当部長)ことで売り上げを積み増すことを狙った。具体的には、マーケティング支援会社AMS(東京都目黒区)の協力を得て、ECサイトで初めて商品を購入した顧客に対して、MAツールを使ってSTEPメールを出し分けるようにした。
まず商品を購入した顧客全員に対して、購入3日後に、ECサイトの機能や使い方を紹介する1通目のメールを送った。このメールには原則、商品の情報は一切載せない。そのうえで、さらに3週間後に顧客が購入した商品ブランドによって内容が異なる、2通目のメールを出した。
この2通目には、109の店舗で働くスタッフのコメントを入れた。その際、109が扱う商品ブランドを、顧客層が似ているブランドごとにまとめていくつかのグループに分け、顧客が購入したブランドを含むグループの商品を店舗で扱うスタッフに、コメントを発信してもらうようにした。
値引きせずに顧客との関係を強化
その狙いは2つある。1つは、「109の強みである店舗スタッフの力を借りて、値下げや割引なしで顧客と強い関係を築くこと」(澤邊氏)だ。109の魅力を最もよく知る店舗スタッフに商品を推奨してもらうことで、顧客からの信頼を獲得し、リピート購入につなげようというのだ。もう1つは「いくつかのブランドを束ねたグループ内での買い回りを促し、クロスセルによる売り上げ増を狙うこと」(澤邊氏)である。
その結果、MAツール導入前にECサイトを再訪した顧客に比べ、MAツールを使って出し分けたメールマガジンを見てサイトを再訪した顧客は、「2回目の購入に到る成約率(CVR)が1.5倍になった」(澤邊氏)という。
今後はデータを蓄積し、MAツールで使うシナリオの数を増やして、より効果の高いメールマガジンによるアプローチを展開する。特に、顕著な効果がまだ出ていない顧客ごとの買い回りを増やし、LTV(顧客生涯価値)の向上につなげていく考えだ。