「♪あなたのセゾン わたしのセゾン めぐるセゾン~」──。5月19日、アイドルグループ「欅坂46」風の衣装で歌い踊る女性グループのミュージックビデオ(MV)が公開されるや、一躍ホットワード入りして拡散に加速がついた。グループの名は「東池袋52」。クレジットカード大手のクレディセゾンが結成した、自社の女性社員からなるアイドルグループである。オリジナル楽曲「わたしセゾン」は、欅坂46が昨年11月にリリースしてヒットした「二人セゾン」へのアンサーソングだ。

サンシャイン60の52階にクレディセゾンの本社があることから「東池袋52」に。「池袋には坂がなかったので…」(相河氏)
サンシャイン60の52階にクレディセゾンの本社があることから「東池袋52」に。「池袋には坂がなかったので…」(相河氏)

 カードの利用データから自社DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を構築し、カード会員の利用促進からデータの外販ビジネスまで多様な施策を打っているデジタルマーケティング先進企業の同社がいったい何をしているのか?

きっかけは欅坂46の「二人セゾン」

 東池袋52プロジェクトを指揮した同社営業企画部プロモーション戦略グループの相河利尚部長は次のように語る。

 「従来型の広告が特に若い層に対してなかなか効かなくなってきている。かつては『セゾン』という企業グループの名が輝きを持って若い人の心を捉えたが、近年は精彩を欠いている感がある。面白いことに先んじて取り組み、時代を切り開いていくセゾンカルチャーをもう一度取り戻したい。それを社内外に示したい。そんなことをずっと考えてきた」

 そんな折、昨年秋に欅坂46の「二人セゾン」を耳にした相河部長は、「当社の応援ソングのように聞こえた」と言う。欅坂ファンの間でも「セゾンカードのCM、ありそう」などと期待が高まっていた。「セゾンつながりで何かできないか」──。

 しかしその淡い期待は早々に吹き飛んだ。マネーパートナーズの「マネパカード」が欅坂46とタイアップし、新規入会特典としてメンバーの写真プレゼントや、コンサートチケットのカード会員優先予約などが決まっていたからだ。

 あきらめかけたとき、かねて付き合いのあるコピーライターの重鎮、仲畑貴志氏から提案されたのが「本家セゾンとしてグループをつくって歌ってみては」というアイデアだった。クレディセゾンはすぐにアイデアを採用。年明けには詞が完成し、さらにAKB48や嵐のヒット曲を手がけた多田慎也氏が作曲を手がけ、アイドルグループで実績のある有名振付師やMV撮影スタッフらも参加するなど豪華な布陣をそろえた。

 メンバーの選定は各部署に協力をお願いし、「彼女はダンス経験がある」といった推薦(一部自薦)などによって、目標としていた欅坂の21人を超える24人が集まった。メンバーは全国の支社やセゾンカウンター窓口、関係会社に散らばっているため、振付の教則ムービーで各自練習し、全体練習は収録前日を含めて2日だけで本番に臨んだという。

多くのチャネルに動画を分散配置して接触機会の増加を図る

 撮影されたMVは、クレディセゾンがYouTubeに開設する「永久不滅チャンネル」で配信されたほか、この取り組みを記事化した「オリコンニュース」や「BuzzFeed Japan」「ハフィントンポスト日本版」「モデルプレス」などにも動画素材を提供し、各ニュースメディアが持つYouTubeチャンネルでも公開された。分散配置することで、各チャネルで他の動画を見ている人の目に留まったり、関連動画に表示されたりする接触機会の増加を狙った。再生回数は合計で90万回を超えている(6月7日時点)。

 惜しむらくは、5月19日午前に各メディアが公開した記事が「今晩19時から動画を公開する」というティザー記事で、それが急拡散した際にはまだ動画公開前だったことだ。反響の大きさから急遽、動画の公開を4時間早めて15時に公開したが、同時公開であれば再生回数はこんなレベルではなかっただろう。

 視聴者の反応はすこぶる好評だ。アイドルグループには熱狂的なファンとアンチの存在が付き物ゆえに、場合によっては中途半端な真似事は双方から反発を招くことも考えられる。しかし、今回はそんな懸念はまったくの杞憂で、動画のリツイート・シェアに添えられる投稿は総じて好意的だった。さわやかな楽曲と真摯に歌い踊る姿から、いい意味で愛社精神が伝わったようだ。

 6月1日から、永久不滅ポイント100ポイントで非売品のCDの交換が始まり、6月7日時点で3000枚を超える反響があった。欅坂46のメンバーが出演するラジオ番組でCMもオンエア中だ。今後について相河部長は、「リアルのイベントも開催したい」と意気込む。やがては欅坂メンバーとの共演もあるのか? 「1stシングル」とうたっているので2ndシングルもあるのか? 一過性のバズで終わらせず、話題を継続させることが成功の目安となりそうだ。

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