5月29日に開催された競馬の祭典、日本ダービーは空前のハイレベルな3歳実力馬が出そろい、大いに盛り上がった。馬券売り上げは前年比10.6%増の265億7409万円、東京競馬場の入場者数も同7.4%増の13万9140人。長らく低迷していた競馬人気が復調傾向にある。

 その一翼を担っているのが「UMAJO(ウマジョ)」と称される女性競馬ファンだ。女性の中央競馬開催場来場者数は、2011年の82万8003人、女性比率13.5%から、2015年は99万9113人、同15.8%に増加し、女性比率は過去最高を記録した。この4年間、来場者の増加率は女性が男性を上回り続けている。日本中央競馬会(JRA)が展開しているUMAJOプロジェクトが実を結んでいる。

女性目線で競馬の楽しみ方を提示する「UMAJO」特設サイト
女性目線で競馬の楽しみ方を提示する「UMAJO」特設サイト

 UMAJOプロジェクトの結成は2012年。前年の2011年まで、中央競馬の馬券総売り上げは1997年をピークに14年連続の減少、来場者も1400万人を超えていた90年代半ばから615万人にまで減少していた。往年のファンが徐々に離れていく中、新たなファン層の獲得は欠かせない。女性ファン獲得施策は以前から実施していたが、タレントを呼んでの馬券の買い方講座などありがちと言えばありがちで、数あるプロモーションの一つでしかなかった。そこで「女性にもっと気軽に競馬を楽しんでもらおう」と入職10年未満の若手女性職員による部局横断型のUMAJOプロジェクトチームを結成した。

 同プロジェクトを担当するJRA経営企画室の市山恵氏は次のように語る。「歴史好きの歴女(れきじょ)、鉄道ファンの鉄子(てつこ)、プロレス好きのプ女子、そして山ガール、釣りガールなどさまざまなジャンルで女性ファンの登場が話題になっている時期でした。競馬もそうしたムーブメントを起こして女性ファンを開拓できるよう、イベント来場者のアンケートなどから、ニーズを探りました」。

 アンケートから浮かび上がったのは、「興味はあるが居場所がない」という声だった。各競馬場ともここ十数年でスタンドを改装して小ぎれいな施設に生まれ変わっている。それでも男性客が9割近くを占めるため、居場所のなさを感じていた。その声に応えて設置したのが「UMAJOスポット」だ。

 東京・府中の東京競馬場を正門から入って3階スタンドに抜ける手前に、カラフルな壁紙を配した女性専用エリアがある。コーヒーや紅茶などをフリードリンクで用意し、スポット内には女性コンシェルジュも常駐。パドックとスタンド、馬券売り場を行き来して疲れたらちょっと休むにはうってつけのスペースだ。5階にはカップルならば男性も入れるスポットを用意している。記者が見学したのは土曜の昼過ぎだったが、女子会ノリの女性グループなどでにぎわっていた。「重賞レースのある日は行列ができることも」(市山氏)という。

 居場所をつくったら、次は競馬の魅力そのものをどう伝えて女性客を呼び込むかが課題になる。ここも新しい発想が必要だ。例えば往年の競馬ファンを呼び戻す目的ならば、懐かしさに訴えかける手がある。昨年の宝塚記念を前に公開した120秒動画「夢の第11レース」は、シンボリルドルフ、ナリタブライアン、ディープインパクト、サイレンススズカ、オルフェーブルといった新旧の名馬たちが同じレースに出走したら…という内容だった。だがこれでは若い女性は動かせない。

写真投稿を促すキャンペーンを展開

 活用したのはSNSだった。競馬場内で写真を撮ってUMAJOスポットのスタッフに見せるとUMAJOオリジナルのチロルチョコやメモパッドをプレゼントする、といったSNS連動キャンペーンで、写真投稿を促した。「競馬場はターフの緑が鮮やかで、インスタ映えするスポット」(市山氏)。フォトジェニックなスポット写真は「いいね!」が集まりやすい。馬をモチーフにしたスイーツやハンドメイドの小物類なども、若い女性のInstagram撮影・投稿意欲をかき立てるもので、それらはフォロワー仲間の競馬への関心を引き出すことにつながった。

 このほか、UMAJO特設サイトでは若手騎手のプロフィールを紹介する「ジョッキーコレクション」を掲載。SNSアカウントを開設している騎手もいるので、そこからフォローすることも可能だ。こうした女性目線に立った施設の改善やコンテンツの見せ方、キャンペーン展開がインサイトのスイッチを押したようだ。

 今年は16年ぶりのJRA女性ジョッキーとして藤田菜七子騎手が注目を集めており、女性客の開拓にはプラス材料だ。また、フジテレビ系競馬バラエティー番組「うまズキッ!」に出演しているAKB48小嶋陽菜さんの3連単5頭ボックス予想も、6月5日のG1レース「安田記念」で15万円馬券を的中させて喜ぶツイートがすぐさまニュースになるなど、競馬へのハードルを下げることに貢献している。こうした追い風も味方につけて、競馬場に足を運ぶ女性ファン率をさらに高めていきたい考えだ。