ソニーネットワークコミュニケーションズ(旧ソネット、東京都品川区)が光回線インターネット「NURO(ニューロ)」の動画マーケティングで大きな成果を上げている。同社の動画広告の特徴はその短さ。再生時間はわずか6秒だ。インパクト重視の動画広告クリエイティブでブランドの刷り込みを狙った。動画広告を起点にWebサイトに集客したことで、2016年度のWebサイト経由の申込者数は前年度比で2倍になった。

 NUROはソニーネットが関東圏限定で展開している、高速光回線のインターネットプロバイダーサービスだ。同サービスのマーケティング課題は知名度である。「商品自体は自信を持ってお薦めできる。だが2013年に開始した後発のサービスゆえに、他社のサービスと比較して知名度が圧倒的に低く、サービスの認知を上げることが先決だった」(ネットワーク基盤事業部門営業部マーケティング課の森静子課長)。

 そのため、NUROというブランド名の刷り込みに徹したマーケティング戦略を採ってきた。例えば、ディスプレイ広告においては、サービス内容とは全く無縁のお好み焼きの画像をあえて使い、「大阪の人にはまだ内緒にしてください」といったキャッチコピーを組み合わせることで、関東圏限定のサービスであることを強調するといった具合だ。

 奇抜な広告クリエイティブだが「非常にCTR(クリック率)が高い」(ネットワーク基盤事業部門営業部マーケティング課の坂本真紀チーフ)。そのユニークさがネット利用者に受けて、NUROの広告クリエイティブをまとめたページがまとめサイトなどで作られ、それがソーシャルメディアでも話題を呼ぶなど、副次的な効果を生んでいる。

 知名度の低いサービスゆえ、機能性をうたっても見向きもされない。まずはインパクト重視で広告を見てもらう。サービスの詳細は誘導先でしっかりと伝える。そんなデジタルマーケティング施策を展開してきた。

 動画広告もその一環として取り組んでいる。当初は代理店営業による販売が主な販路だったが、デジタルマーケティングの効果が高まるにつれて、ブランドサイトが販路として大きく成長。さらなる客層の開拓が求められた。そこで、それまであまり出稿していなかった「YouTube」を活用することで、新たな客層へのアプローチを試みることにした。

動画閲覧者のストレスを低減

 それまで通常の動画広告には、「動画を見に来た人の邪魔になるイメージがあったため、あまり積極的に取り組んでいなかった」(森氏)。そこで着目したのが短尺の動画広告だ。グーグルが2016年から提供する動画広告商品「Bumper」は、視聴する側がスキップできない代わりに再生時間がわずか6秒と短い。これなら視聴者のストレスにならないと考えた。

「NURO」の囲碁の解説番組風の動画広告
「NURO」の囲碁の解説番組風の動画広告

 この6秒の動画広告でも、とにかくブランド名を刷り込むことを狙った。例えば、囲碁や将棋の解説番組風の動画広告では、盤上の石や駒で「NURO」という文字を表現。歯磨き編では、チューブから歯磨き粉がひねり出る様子を「にゅーろ」と擬音語で表現するなど、ブランド名が印象に残るように工夫した。こうした広告クリエイティブを10パターン以上制作して、2016年6~9月にかけて配信した。これが奏功し、ブランド名での検索数は大幅に増加した。

 動画広告の接触の有無で比較すると、動画広告に接してからブランド名で検索する人が、接しないで検索する人の4.3倍に達した。わずか6秒の動画広告が集客効果を高めた格好で、売り上げ増加につながっている。2017年度はこのBumperの活用をさらに進める。広告効果のデータを見ながら、従来よりも広告クリエイティブの差し替え周期を半分に早めるなど、PDCAをより高速に回して、さらなる効果の向上を狙う。

この記事をいいね!する