5月26日から27日にかけて開催された主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は、「G7 伊勢志摩首脳宣言」と6つの付属文書を採択して閉幕した。首脳宣言では、世界経済の低成長化のリスクに対する危機感を示すとともに、すべての政策手段を用いて、均衡ある成長の達成を目指すとした。また、デジタル・エコノミーや科学及び技術など、経済成長に資する分野へのさらなる投資を推進すると記している。
付属文書の1つ「サイバーに関するG7(主要7カ国)の原則と行動」においても、新たな技術によって加速されたデジタルイノベーションが、経済成長の創出のための推進力になると表明した。生活の質の改善のためのデジタル技術の採用を促進することでG7は合意。デジタル技術の活用は、世界経済の成長の一翼を担うとの認識だ。
それゆえ、伊勢志摩サミットの会場においても、企業による新たなデジタル技術を採用した試作品などの展示が見られた。ロボットタクシー(東京都江東区)もその一社だ。同社はモバイルサービス事業のディー・エヌ・エー(DeNA)と、ロボット事業のZMP(東京都文京区)による共同出資会社。DeNAの持つスマートフォン向けのアプリ開発技術と、ZMPの自動運転技術を組み合わせた、完全自動走行のタクシーサービスの実現を目指している。既に神奈川・藤沢で実証実験を実施しているが、伊勢志摩サミットにおいて、初めてメディア向けに試乗デモンストレーションを行った。
アプリで乗車から決済までを完結
ロボットタクシーは配車からドアの解錠、そして決済まで、一連のサービスを専用のアプリで利用する。まず、アプリの画面に表示された地図上で、乗車地点と降車地点を設定すると、指定の場所にタクシーが到着する。こうした乗車設定は、従来のタクシーの配車アプリと同様だ。乗車にもスマートフォンを用いる。アプリを起動した状態で、クルマの窓ガラスの指定場所にスマートフォンを近づけると、解錠されてドアが開く。乗車後に、車中の指定場所にスマートフォンを置くことで、ドアが閉まり、発進する。ルートの決定とともに乗車料金も確定する。

車体には周囲360度を検知するセンサーやカメラが搭載されており、他のクルマや信号機などを把握。車載されたコンピューターが、スピードのコントロールを指示して自動走行を可能にする。ただし、現行制度下では運転手が乗車している必要がある。このため、試乗デモにおいてはあくまで緊急時に対応するために運転手が乗車はしているものの、ハンドルやアクセルなどには触れずに、自動運転でコースを走行する。目的地に到着すると、アプリに登録されているクレジットカード情報で決済が完了して降車できる。

ロボットタクシーでは自動運転のタクシーの実現だけではなく、走行によって得られるデータを活用した事業も視野に入れる。「タクシーが走行する、あらゆる場所の交通情報に加え、天候のデータなども取得できる。そうした走行に関するデータ提供事業も考えられる」(ロボットタクシー広報の新井野翔子氏)。ロボットタクシーには海外メディアの記者も多く試乗しており、デジタル技術を用いた日本企業の新たな可能性に関心を寄せていた。