ウォーキングシューズやスニーカー、サンダルなどカジュアル路線だが、しゃれたデザインの靴が揃うことで人気の米ラック・ルーム・シューズ(Rack Room Shoes)。1920年創業という靴の小売店としては超が付く老舗企業である。長らくリアルな店舗のみで「Amazon.com」などのEC(電子商取引)企業と戦ってきたが、2014年、ついに自社ECサイトをオープン。オムニチャネル化に乗り出した。その狙いは、既存の顧客が複数回の購入をしてくれるようになること。「ECサイトの開設が2度めの購入につながるなら、ブランドとしては大きな前進だ」。CRM(顧客関係管理)ディレクターを務めるポール・ヴォス氏は話す。

米ラック・ルーム・シューズが、オムニチャネル戦略の柱と位置づけている自社ECサイト
米ラック・ルーム・シューズが、オムニチャネル戦略の柱と位置づけている自社ECサイト

 もちろんECサイト開設はオムニチャネル実現の第一歩だ。解決すべき課題は他にもある。ラック・ルームは2002年に同業の「オフ・ブロードウェイ・シュー」を買収しているが、2社は米セールスフォース・ドットコムの「Marketing Cloud」をそれぞれに導入。ロイヤリティープログラムのプラットフォームが別々になっており、顧客データなども統合されていなかった。そのためメールの送信に必要な顧客データなどを手作業で抽出するなど、さまざまな問題があったという。

 顧客に送っていたダイレクトメールにも課題があった。1週間に3通送る週もあれば、1通の週もある。さらに顧客の属性や好みに応じてメールをカスタマイズすることも実現できていなかった。

マーケティングの自動化が進展

 一連の課題を解決するため、同社は2015年6月にMarketing Cloudの統合を始めた。店舗、ロイヤリティープログラム、EC、一部のWebサイトとモバイルのデータを統合。2015年10月に、統合したデータに基づくメール配信を開始した。また、顧客にどのチャネルでどのように接触するかといったマーケティングシナリオの設計ができる「Journey Builder」など、Marketing Cloudが持つメール以外のサービスの利用も進めている。既に、何らかのキャンペーンの終了日の60日、30日、15日前に、終了日が近いことをメールで知らせる場合に、システムが自動的にメールの内容を変えて送信するといった自動化が可能になっている。

 ロイヤリティープログラムについては、SMS(ショートメッセージサービス)を活用するシステムを導入した。顧客の携帯電話にSMSを送り、4つのステップで、ロイヤリティープログラムの加入に必要な情報を収集できる。それまでは店舗スタッフが顧客からメールアドレスを聞いたりしていた。だが、この方法では手間がかかり、アドレスをスタッフが入力ミスすることも少なくなかった。

 新システムにより、こうした問題を解消。ロイヤリティープログラムの会員数は、2社合わせて700万人まで増えた。さらに、誕生日に10ドルの割り引きが受けられるキャンペーンや、毎週実施しているフラッシュセールなどで「2度めの購入」をする会員が増加。この結果、オレゴン州では会員の売り上げが9%増加し、苦戦していたコロラド州では、46%も増加したという。

 次の大きなマイルストーンは、今年6月に開始するモバイルアプリだ。モバイルからのアクセス比率が拡大していることを受けて、アプリの提供を始める。アプリ経由でさまざまなリワード型キャンペーンを打つことで、「2度めの購入比率」をさらに高めることを目指す。