理容品メーカー大手スヴェンソン(東京都港区)の女性向け医療用ウィッグを扱うレディス事業部が、オウンドメディアを強化し、見込み客を顧客化することに力を入れている。

 女性向け医療用ウィッグの専用サイトに、ポップアップなどで来店予約を促すマーケティングツールを実装してCVR(コンバージョン率)を高めたり、掲載するコンテンツの内容を充実させてサービスの理解度を高めたりして、売り上げ増を狙う。

ニーズ顕在化の直後が勝負

 レディス事業部が扱う商品の大半は、がんを患った女性が治療の副作用で頭髪が抜けたりしたときに使う医療用ウィッグ。罹患してから情報収集を開始し、購入してから平均1.5~2年使用する。ニーズは明確に存在するが、潜在的な見込み客にマス広告でリーチするのは、コストがかかりすぎて非効率だ。

サイトを離脱しようとした利用者にポップアップを出す仕組みを導入
サイトを離脱しようとした利用者にポップアップを出す仕組みを導入

 がんを患ってニーズが顕在化した見込み客は、検索などから専用サイトに流入することが多い。この見込み客の数を増やし、競合他社との比較の中からスヴェンソンを選んでもらい、全国に41ある店舗のいずれかに来店予約させることが、マーケティングとして重要になる。そのため、「オウンドメディアを強化し、流入してきた見込み客に商品やサービスを理解して選んでもらう」(レディス事業部販促・マーケティンググループマネージャーの川合康幸氏)ことに力を注ごうと考えた。

 まず2016年8月、専用サイトへの流入を促すリスティング広告の強化と併せ、マーケティング支援会社エフ・コード(東京都千代田区)のマーケティングツール「f-tra(エフトラ)」を導入。「専用サイトに流入した見込み客の離脱を防ぎ、CVRの向上を目指した」(川合氏)。

 具体的には2016年9月からの3カ月間、サイトからの来店予約や資料請求を成約とみなし、f-traを使ってABテストを繰り返した。サイトから離脱しようとした来訪者に示すウィッグ案内のポップアップのクリエイティブやその出し方を変えたり、来店予約を案内するバナーを表示したりしなかったりして、効果を確認。見込み客の離脱率を抑制できる手立てを採用した。その結果、f-tra採用前の2016年7月と今年3月を比べた場合、「CVRは約0.7ポイント向上した」(レディス事業部販促・マーケティンググループ ディレクターの小谷祥巳氏)という。

 今年春からはコンテンツの充実にも取り組み始めた。サイトを訪問する見込み客には、がんを患った本人に加え、「本人と同じくらいの数だけ、その家族もいる」(小谷氏)。そこで、本人が関心を寄せることの多いウィッグのデザインや価格に加え、家族が重視する医療用ウィッグとしての機能や一般のウィッグとの違いといった情報も充実させた。

 こうした施策を今後も進めて、レディス事業部の売り上げ増を目指していく。

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