その日の気温や湿度によって36通りの広告クリエイティブを出し分ける。そんな施策に取り組んだのが空調機器メーカーのダイキン工業だ。「広告もパーソナライズ化が進む中、データと連携してタイミングや接触態度に合わせた広告クリエイティブを配信することに大きな可能性を感じていた」。ダイキン総務部の片山義丈広告宣伝グループ長は今回の取り組みの背景をこう説明する。

 家庭用エアコン分野のダイキンの広告宣伝は、ブランディングが主な役割となる。「エアコンは広告を見てすぐに買うものではない。購入の検討段階で選択肢に入るためにブランドとの接点を作り続ける必要がある」(片山氏)。とはいえ、業務用エアコン事業が中核となるダイキンは、「競合に比べて広告宣伝費は小さい」(片山氏)。そのため、新たな広告手法を率先して取り入れたり、独自で開発したり、工夫をこらして差異化を図ってきた。

空気で色が変わる「ぴちょんくん」

 昨年6月、大阪・梅田のシログチビル屋上に登場した、ダイキンのキャラクター「ぴちょんくん」の大型看板広告もその1つ。フルカラーのLED看板で、温度や湿度から空気の快適性を判定する仕組み「ダイキン空気感インフォメーション」に基づき、ぴちょんくんが9色に変化する。色だけではなく絵柄も変化する。例えば、花粉の飛散量が増加するときは、マスクをつけた絵柄が表示される。

ダイキンが出し分けた広告クリエイティブの一例
ダイキンが出し分けた広告クリエイティブの一例

 この仕組みをデジタル広告に応用した。実現する上で活用したのが、グーグルの「リアルタイム・データドリブン・クリエイティブ」である。これは自社の持つデータやグーグルが提供する第三者のデータなどを活用して、広告クリエイティブを出し分けられる仕組みだ。

 出し分ける広告クリエイティブは、9色のぴちょんくんと晴れや雪といった4つの天気を表す背景を組み合わせた全部で36通り。驚きなのは「クリックされない広告」(総務部広告宣伝グループの天野貴史氏)を目指して制作したことだ。その心を天野氏はこう説明する。「今回の施策で目指したのは、広告よりもインフォメーション。広告媒体となるサイトの利用を阻害せず、ぴちょんくんが寄り添って空気の状態を教えてくれる。そうして自然とダイキンブランドが刷り込まれる。そんな広告を狙った」。これを東京在住の25~44歳の男女をターゲットに2月9日~3月10日にかけて配信した。

 広告効果については、広告接触者と非接触への広告認知調査を実施し、比較分析した。他の広告と比較すると広告認知は低かったが、想定より数値は高かった。また空気の変化に敏感と思われる女性は、男性よりも効果が高いなど発見もあった。今後は段階的に地域を広げて知見を蓄積しながら、データと連携してパーソナライズ化した広告の価値を探っていく。