「カスタマージャーニーマップの作成・見直しに沿ってWebサイトを改善する」「離脱率の高いページでその原因を推測し、表現を見直す」「入力フォームの改善で"カゴ落ち"率を低減する」──。企業のWeb担当者は日々アクセス状況を見ながら、サイト改善に努めているが、優先順位を付けて取り組むことで対応が後手になりがちなコーナーがある。Q&A、FAQ(よくある質問)と呼ばれる顧客向けの問い合わせページがその一つだ。
作成したまましばらく放置し、サービス名が変わったのに旧称の表示が残っているような"メンテナンス不足"の企業も珍しくない。だがQ&Aコーナーは利用・購入検討中だからこそ閲覧するページであり、目当ての情報にたどり着けずに離脱すると、再訪は望み薄だ。
このQ&Aコーナーを改善し、予約申し込み件数を増やしたのが、宿泊施設やレストランの予約サイト「一休.com」を運営する一休である。
同社の会員数は427万人(2016年2月時点)に上り、予約の大半はWeb経由で完結する。ただし、比較的高級なホテル、レストランの予約を取り扱うため、会員の平均年齢が45歳とオンライン予約サービスとしては高め。電話、メール、Webフォーム経由の予約申し込みも用意してあり、50代以上の利用が多いという。
問い合わせに追われて機会損失
この3つのルートは、同社カスタマーサービス部が管轄しているが、問い合わせの電話対応に追われることで予約申し込みの電話が話し中で着信できず、得られるはずの予約申し込みを取りこぼしていることが懸案として挙がっていた。
そこで同社は、オラクルのコンタクトセンター向けソリューション「Oracle Service Cloud」を導入し、Q&Aコーナーの改善に乗り出した。まず取りかかったのが、「ログインできない」「キャンセル料について知りたい」「領収書を分割して発行できないか?」といったよくある質問のジャンル別整理と見直しだ。同社はそれまでもQ&Aを強化して項目数を都度増やしてきたが、検索結果に表示される回答が多くなりすぎ、自分の質問に見合う内容を見つけにくい状態を招いていた。そのため、「600件近くあったQ&Aを350件ほどに集約した」(一休カスタマーサービス部部長の佐貫駿博氏)。
Oracle Service Cloudは、ユーザーの検索キーワードや回答の閲覧状況などを学習することで最適な回答を検索結果に優先表示する機能を持つ。また、直近で特に多い問い合わせ内容を判別し、Q&Aのトップページに掲載する。こうした改善によって、ユーザーが電話やメールで問い合わせずに自己解決できるようになり、「電話、メール、Webフォーム経由の問い合わせ数が月間平均で約40%減少。電話の着信件数は20%近く増え、その分、予約申し込みを増やせた」(佐貫氏)。カスタマーセンターから発生する売り上げの取りこぼし防止に、Q&Aの改善が威力を発揮した好例だ。