日経デジタルマーケティングは4月18日、読者無料セミナー「Digital Marketing Conference 2016 Spring」を開催した。その事例講演の模様をレポートする。
ハーゲンダッツ ジャパンは、2016年2月発表の「第5回 ソーシャル活用売上ランキング」において、消費行動ランキングで4位、推奨スコアランキングで5位に入った。消費者から高い支持を得ている要因の1つには、ソーシャルメディアを活用して新商品の認知を高めたことがある。「ハーゲンダッツのソーシャルメディア戦略」と題した講演では、同社マーケティング本部の續怜子氏がソーシャルメディア導入の背景や運営ノウハウについて語った。
ハーゲンダッツ ジャパンがソーシャルメディアに取り組み始めたのは、2010年のTwitterから。その後、FacebookやLINE、Instagramと、利用するソーシャルメディアの種類を増やしてきた。いずれも目的は、他のメディアを利用する場合と同じく、「新商品の認知獲得」と「購買のきっかけづくり」である。
中心顧客であるF1層(20~34歳の女性)のテレビ視聴時間が減り、代わりに同層のケータイやスマートフォンの利用時間が増えるという環境変化を背景に、ハーゲンダッツ ジャパンはデジタル施策をより重視し始めた。中でも、ニールセンの「広告の信頼度」調査(2013年)によれば、ソーシャルメディアはユーザーからの信頼が厚く、加えてユーザーがネットを利用する際のアクセス経路が、パソコンのWebサイトからスマホのモバイルサイト、そしてスマホアプリへと変化したこともあって、ソーシャルメディア重視に大きく舵を切った。実際、同社の新商品の認知経路のうち、「ソーシャルメディア経由」が過去2年で倍増し、「店頭経由」に迫る勢いだという。
ファン1万人から604万人へ拡散
ハーゲンダッツ ジャパンでは、4つのソーシャルメディアを利用し、それぞれの特性に合わせて運営を行う。匿名性が高くテキスト中心で、リアルタイム性と拡散力が高いTwitterでは、拡散を狙った商品情報やキャンペーン情報を提供し、ユーザーの投稿にも反応する。圧倒的なユーザー数でマス媒体並みのリーチが可能なLINEでは、新商品の告知が中心。実名利用が原則でオフィシャル感が強いFacebookでは、商品情報の提供とエンゲージメントの高いコアファンを意識したコミュニケーションを展開。若い女性が中心でビジュアル志向のInstagramでは、質の高い写真でブランドを訴求し、感度の高い先進ユーザーとの絆を強化している。
運営過程において、「LINEはユーザー数は圧倒的であるものの、拡散先まで含めるとTwitterのほうが幅広くリーチできる」ことや「リツイートで参加できるキャンペーンだと効率良く拡散できる」といった経験を蓄積。実際の新商品キャンペーンでは、1万人がニュースをリツイートしたことで、604万人へリーチできたという。
ソーシャルメディアの活用には、「投稿のバランス感覚」が重要だ。續氏は、「ブランドの世界観や価値を踏まえた上で、独りよがりにならず、企業が伝えたいこととユーザーに喜ばれることのバランスを意識すること。しかもそのバランスはソーシャルメディアごとに異なる」とし、具体例として「LINEはクーポン告知の反応が良く、Twitterは早い段階の情報提供が喜ばれる。Instagramではクリエイティブを工夫し、商品をネイルで表現した写真が注目された」ことなどを示し、講演を終えた。