「ネットで服は売れない」と言われたのはすっかり過去の話になった。しかし、ネットで売るのはそう簡単でない商品群は今なお存在する。メガネはその一つだ。
格安メガネやパソコン用メガネ「JINS PC」で市場を開拓したジェイアイエヌは、2007年にメガネ専門EC(電子商取引)サイト「JINSオンラインショップ」を立ち上げた先駆者だ。もっとも、開設から9年を経ても、「誰もが気軽にメガネをECで買うようになった」と言えるレベルには至っていない。「店頭でリアルに試着してから」という声は依然として根強くある。
この課題を解決すべく、今年3月に提供を開始したのが、メガネの3Dバーチャル試着サービス「JINS VIRTUAL-FIT」である。顔解析エンジンを搭載したスマートフォン向けアプリ「JINS VIRTUAL-FIT CAMERA」で顔動画を撮影すると、選んだメガネをバーチャル試着した自分の顔が表示され、左右にスクロールするとそのメガネをか けた横顔まで確認できる。

このサービスの開発を率いた同社Eコマースグループリーダーの在田正弘氏は、開発経緯について次のように語る。
「ECでメガネを買うには3つの壁があった。『自分のレンズの度数が分からない』『フィットするか?』、そして最大の懸念が『自分がかけて似合うか』。度数については、保証書に度数コードを記載し、また利用中のメガネを送ってもらって同じ度数で新しいメガネを作るサービス(JINS MAIL ORDER)も始めたことで解決している。そこで、似合うかどうか判断できる本格的な試着サービスを提供しようと、2年がかりで開発に取り組んだ」。
店頭と遜色ないバーチャル試着
使い方は以下の通り。まず専用アプリをダウンロードし、案内に従って右顔→正面→左顔の順に動画撮影をする。撮影した顔動画の解析が完了すると、すぐにアプリ上で「ウエリントン」「スクエア」など4タイプのメガネをかけ比べることができる。左右にスワイプしても横顔にメガネが違和感なく付いてきてかけ姿を見られるため、店頭の鏡の前で試着している感覚だ。似合うかどうか判断するには十分。視力の弱い人にとっては、店頭でレンズのないフレームを試着するよりむしろ便利そうだ。
顔動画を保存してECサイトの会員情報と連携すれば、ECで購入できる商品の大半(2000種類以上)のバーチャル試着が可能になる。気に入った商品はそのままECで購入できるのはもちろん、フィット感を確認したい場合は店舗在庫確認機能で最寄りの店舗の在庫を調べ、実店舗でリアルに試着して判断することもできる。その意味でこの3D試着機能は、EC購入のハードルを下げると同時に、実店舗にも向かわせるオムニチャネル促進の役割も担っている。
加えて、メガネの連続試着機能「FIT ALL」をECサイトに搭載し、意外に似合うメガネと出会う機会を作り出している。在田氏は、「店頭で接客していた時に感じたのは、自分の顔立ちに似合うメガネを把握していない人が多いこと。連続バーチャル試着で、自分では選ばないタイプの中から似合うメガネを発見して購入につながったらうれしい」と語る。3月9日に公開したのはiOS対応アプリのみだが、4月末にはAndroid版も展開する予定だ。