「テレビCMだけでは、若年層には十分リーチできない。そう考えたことから、番組提供をやめ、その予算を『LINE』にシフトした」

 こう明かすのは、プリマハム営業本部の坂井尚文営業統轄部長だ。同社はこれまで、テレビCMや取引先である小売店舗の店頭で、商品やキャンペーンの告知に取り組んできた。しかし、それらの施策でリーチできるのは既存顧客である主婦が中心。「未来の顧客になり得る若年層とは、接点が持ちづらかった」(坂井氏)。

漫画ソップリンを配信しているプリマハムのLINE公式アカウント
漫画ソップリンを配信しているプリマハムのLINE公式アカウント
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 こうした危機感を抱く中、目をつけたのがLINEだ。LINEが若年層の間で浸透しているのは言わずもがな。さらに、「同業者がLINE公式アカウントを開設していなかった」(坂井氏)ことも、活用を後押しした。他社に先駆けて関係性を築けば、LINE利用者にブランドをしっかり刷り込める可能性があったからだ。

 そこで、同社は昨年からLINEの活用を積極化している。LINEを活用する上で、主力商品であるウインナーをキャラクター化した「ソップリン」を制作した。同キャラクターを使った大型絵文字「スタンプ」をLINE上で提供したことで、一気に「友だち」を獲得。既に580万人を超える友だちが登録している。

 「お・ま・た・せ!フフフ…」など、ソップリンが送っていると仮定した文面でメッセージを送ることで、親近感の醸成を狙う。配信するコンテンツは主にレシピ、キャンペーンの告知、エンターテインメントコンテンツなど。特に人気を集めているのが、ソップリンを題材にした漫画だ。LINEの友だち限定で配信しているもので、当初4回で終了する予定だったが、人気の高さのあまり6回まで延長した。

 また、6カ所あるリンクの好きな場所をタップすることで、寝ているソップリンを起こすといったゲーム要素を含むコンテンツも提供している。宣伝だけでなく、楽しんでもらうコンテンツを配信することで、メッセージへの関心を高めている。

自社サイトのPVは2.3倍に増加

 活用するうえで設定している主な効果指標は、自社Webサイトへの誘導数だ。例えば、LINEでレシピを告知しているため、プリマハムのサイトでもレシピなどのコンテンツが継続的に見られるようになるなど、利用者との接点が拡大しているという。その結果、プリマハムのサイトのPV(ページビュー)は、LINE活用後の2015年5月~2016年3月の平均値と、前年の同期間で比較した場合、2.3倍に増加した。

 目下の課題は、ブロック率をいかに低下させるかだ。LINEは簡単な操作でメッセージの配信をブロックできる。そのため、メッセージに関心を持たれないと、すぐにブロックされてしまう。「現状ブロック率は6割程度となっている」(坂井氏)。そこで、4月中に、ブロック率の低下を狙ってスタンプ配布の第2弾を実施する。

 スタンプはプリマハムのLINE公式アカウントと友だちになっていないとダウンロードできない仕組み。ブロックをしている人は、ブロックを解除しなければダウンロードできない。「スタンプが人気になると、次回のスタンプを楽しみにしてブロック率が低下すると言われる」(坂井氏)。こうしたスタンプ施策を織り交ぜながら、メッセージが届く母数の維持を目論む。