4月3日からテレビ朝日で放送が始まった番組「モデる」。同番組は、写真・動画特化型SNS「Instagram」などと密接に連携して、視聴者と共に作る共創型の番組だ。この番組は、リサイクルショップチェーンのコメ兵による1社提供となっている。1社提供型番組は、同社としては初めての取り組みとなる。
1社提供の狙いは関東圏における「KOMEHYO」ブランドの認知向上だ。コメ兵は昨年から関東圏を戦略エリアに設定し、池袋、立川、自由が丘などに相次いで出店中。しかし愛知県発祥のブランドゆえ、関東圏では認知が十分に行き届いていない。「新宿店は非常に良い立地にもかかわらず、売り上げは名古屋の本店にいまだに届いていない。その要因はブランド認知の低さだろう」と営業企画部長の吉田浩之氏は見る。
市況も変化している。この数年で「メルカリ」や「ヤフオク!」など、ネットを活用したフリーマーケットサービスがテレビCMを使って急速に利用者を増やしている。これはコメ兵にとって脅威だが、リユース市場の拡大というチャンスでもある。そこで、「スピード感をもってブランド認知を広め、新たな顧客を獲得する」(吉田氏)ために、テレビCMの出稿を決めた。
とはいえ、「KOMEHYOはブランド品のイメージが強く、単にテレビCMを放送しただけでは若年層の来店にはつながりにくいだろう」と藤原義昭IT事業部長は言う。そこで、ターゲット層をF1(20~34歳の女性)に絞り、KOMEHYOとファッションを結びつける番組を提供することにした。「1社提供型ならコンテンツにもある程度、要望が出せ、コンテンツマーケティングに近い考え方ができる」(藤原氏)。
既に700枚超の写真が投稿
テレビ朝日側に求めたのは、衣類のリユースとKOMEHYOブランドがひも付くこと。SNSを通じて、視聴者以外にも番組が広がることだ。そのため、番組はInstagramなどのSNSが起点となる。まず、視聴者からSNSを通じてコーディネート写真を募る。ハッシュタグ「#モデる」が付いた投稿写真の中から毎週1つを選び、その投稿者の自宅をモデルが訪問。そして投稿者の洋服を使い、そのモデルのファッションをコーディネートするのだ。投稿者の許諾を得たうえで、その洋服とモデルを番組内で放送するテレビCMにも起用して、クチコミでの情報拡散も促す。
コメ兵は、周囲に情報が広がり、さらに視聴者と投稿者が増える好循環を描いている。4月中に1000枚の写真投稿を目標にしていたが、既に700枚を超える写真が投稿されており、順調に参加者が増えている。
また、番組と連動したWebサイトをコメ兵主体で作っている点も珍しい。「投稿写真などは資産になる。また、番組名などが検索されたときの受け皿を自社で持てば、その後にリターゲティング広告の配信もできる」(藤原氏)。サイト上では、番組に選ばれた投稿者のコーディネートのポイントや、撮影中の舞台裏などを紹介している。そうして、番組と連動したコンテンツも資産としてマーケティングに活用しながら、視聴者との接点拡大を狙う。最終的な目標は、関東圏の店舗売り上げとF1層の買い取り利用者を、ともに前年比10%増にすることだ。