格安航空会社(LCC)大手ピーチ・アビエーション(大阪府泉南郡)は、AI(人工知能)による音声認識技術を使った自動応答システムや、電話をかけてきた顧客をWebサイトに誘導する仕組みなど、複数の手段を組み合わせて運航状況を24時間案内するサービスを、2017年度中に開発して実用化を目指す。2人いるAIに詳しいエンジニアを中心に、ITソリューション会社などと協力しプロジェクトを進める。

ピーチは、自社コンタクトセンターでの電話による運航案内サービスの受け答えにAIを活用する実証実験を、昨年8月から10月まで実施した。専用の電話番号にかけてきた顧客に、自動応答システムで飛行機の出発地と到着地を尋ね、音声認識技術で運航路線を特定し、当日の運航状況を案内するもの。AIによる音声認識技術が実用化できそうか、コストを抑制しながら利便性を引き上げられるかを検証した。
運航状況の問い合わせ数は「予想以上」
検証の結果、手応えが得られた。「運航状況の問い合わせ数は、当初の予想をはるかに上回った」(人事・イノベーション統括本部イノベーション統括部の前野純部長)。特に、コンタクトセンターが営業していない7時、8時台の便の問い合わせや年輩の顧客からの問い合わせが多く、確実にニーズが存在することが分かった。「少ない投資で実用化できる目途も立った」(前野氏)という。
一方で、技術的な課題も見えた。実験で使用した音声認識技術では、数字の9(キュー)とアルファベットのQ(キュー)を区別することが難しかった。そこでピーチでは、AIだけに頼らず、複数の手段で運航状況を24時間案内できるサービスを開発することにした。

ピーチは2011年の創業以来、これまで国内外で就航路線や便数を増やし、規模を拡大してきた。現在は関西国際空港を拠点とし、国内線12路線、大阪(関空)-ソウル(仁川)、大阪(関空)-台北(桃園)など国際線13路線を運航中。今後も路線数や便数の拡大を進める計画だ。
しかし低価格を維持するには、機材や乗員の拡充、機体の整備などに投資しつつ、その他のコスト増は抑えたい。それでいながら何度も利用してもらえる関係を、多くの顧客との間に構築したい。そこでAIによる音声認識技術に目を付けた。
コンタクトセンターに導入して自動応答が可能になれば、現在、コスト削減のため午前9時から午後6時となっているコンタクトセンターの対応時間を、人員増をせずに24時間化できる。コンタクトセンターの担当者が、当日の運航状況を尋ねる電話から“解放”され、差し迫った依頼に対応する時間を確保しやすくなる。
AIによる音声認識技術は他への応用も検討している。社外から代表番号に電話をかけてきた人に、話したいスタッフの名前を言ってもらい、その内線につなぐ、などだ。各自に外線番号や携帯電話を与えなくても、「低コストでスピーディーに外部と連絡が取れるようになる」(前野氏)。こちらは既に試作にこぎつけている。
ピーチでは今後もAIを活用することで、コストを抑制しながら顧客の利便性を向上する道を探る考えだ。