米ザ コカ・コーラ カンパニーほどの巨大企業のブランドマネジメントになると、本社がグローバル標準を決め、ローカル市場に展開することが正解に見える。しかし、各国市場で異なる規模や成熟度を無視し、一律に本社のやり方を押し付けることは難しい。また、すべてを各国の裁量に委ねることもできない。
Webサイトのリニューアルでも同じことだ。これまでの同社は、オウンドメディア重視でブランドサイトを運用してきた。各国が独自にコンテンツを制作してきたこともあり、サイト数は2000以上もあったと同社ディレクターのリサ・ロジャース氏は振り返る。パートナーのデジタルエージェンシーは600社を超え、委託する業務内容と投資が重複していた。先進国と新興国のサイトにはギャップもあったという。

これらの課題を解決するため、同社はグローバルプロジェクト「Go!」を開始した。全世界のマーケターがスキルや専門性を活かし、消費者とのエンゲージメント向上に集中できる環境を整備するために開発するCMS(コンテンツ管理システム)プラットフォームの名称でもある。消費者とのエンゲージメントで重要なのは、サイトではなくコンテンツ。グローバルでブランドサイトの統一感を維持しながら、各国マーケターが必要とする多種多様なコンテンツの制作と迅速な提供を実現することを目指した。
マーケターとパートナーが協働
「Go!」の開発で同社が重視したのは「柔軟性」と「再利用性」だ。画像などの小さな“部品”をパズルのように組み合わせることでページ編集が容易になり、訪問者に合わせてカスタマイズしたコンテンツを素早く提供できるようになる。こうした狙いでアドビのCMSツール「Adobe Experience Manager」を導入した。
さらに同社はパートナーとなる各国の代理店などにも「Go!」を有償で解放した。「Go!」の会員となった会社は、初期費用50万ドルと年間保守料4000ドルを負担する。この費用にはサイト運営費用のほか、コカ・コーラが提供するコンサルティング、トレーニングなども含まれる。なお新サイトを立ち上げる場合、本社から標準的なコンテンツを提供するが、各国のマーケターはそのまま採用するか、代理店などと相談して別のコンテンツを制作するかを決められるという。
Go!の運用開始は2014年第1四半期(1Q)だが、2015年1Qから2017年1QにかけてGo!を使い始めたコカ・コーラのサイトは194から450まで増えた。サイト制作に使える部品は48から85に倍増。部分の再利用は延べ1万4000回から8万回になった。このGo!の稼働でサイト構築費用は低減し、マーケターの生産性も向上したという。