日本アイ・ビー・エム(IBM)が、「ソードアート・オンライン ザ・ビギニング Sponsored by IBM」と名付けたVR(仮想現実)ゲーム体験イベントを、3月18~20日の3日間、東京で開催した。

 「ソードアート・オンライン」は、日本国内の累計発行部数が1150万部を超える小説で、既にTVアニメ化やゲームソフト化もされている人気作品だ。体験イベントでは、作品の中で2022年にサービスが始まることになっている仮想現実大規模多人数オンライン(Virtual Reality Massively Multiplayer Online=VRMMO)ゲームが、実は2016年にテストされていたと設定。ソードアート・オンラインの世界をVRMMOゲームで体験できるように、ヘッドマウンテッドディスプレー(HMD)を備えた体験ブースを4つ用意した。そしてVRコンテンツの制作を手がけるワン・トゥー・テン・ホールディングス(京都市下京区)が、VR技術とIBMのクラウドサービス「SoftLayer」を組み合わせて制作したコンテンツを、参加者に体験してもらった。

日本IBM公式Twitterへの2月22日付の投稿。コアユーザーならば、ソードアート・オンライン関連であることは一目瞭然
日本IBM公式Twitterへの2月22日付の投稿。コアユーザーならば、ソードアート・オンライン関連であることは一目瞭然

 日本IBMはこのイベントを、広告をまったく使わず、自社の公式Twitterだけで告知する作戦に出た。イベント1カ月前の2月22日に、「あのVRMMOを、IBMのテクノロジーが現実に。明日10時に詳細を発表します。」とソードアート・オンラインの画像付きで投稿。翌23日にイベント公式サイトのURLとともにプロジェクトの始動を改めて告知した。

 すると、ソードアート・オンラインのファンを中心に情報が拡散し、「22日の投稿は250万インプレッション、23日の投稿は100万インプレッションを記録し、2つの投稿を合わせたリツィートも3万4000に到達。公式Twitterのフォロワー数も投稿前に比べて2.5倍に急増した」と日本IBMコミュニケーション&ブランドエクスペリエンス本部長の山口有希子氏は話す。イベントを体験できる人は3日間合計で208人限定だったが、10万人以上の応募が殺到した。

 日本IBMはイベント前後にも情報の拡散を狙った施策を打った。インフルエンサーやメディア関係者など数十人をイベント前日に招待してVRMMOを体験してもらい、Webメディアやソーシャルメディアなどでの話題拡散を狙った。イベント参加者にも、自分のソーシャルメディアに感想を投稿することを促している。

 イベント後には日本IBMが運営する、社会で起こるイノベーションを取り上げるオウンドメディア「mugendai(無限大)」で、VRMMOを実際に体験した著名人インタビューなどを掲載した。この結果、「3月29日時点で、ソードアート・オンラインのVRMMOに関わるTwitteer投稿の総インプレッションは1億5000万。リツィートも10万の大台に到達した」(山口氏)。4月15日には、VRMMOの一部を含む動画をmugendai上に公開し、イベントに参加できなかった人にもソードアート・オンラインのVRMMOの世界を疑似体験してもらい、さらに話題の盛り上げを狙う。「当初想定していたターゲット層に加え、より多くの人々にVRMMOについて知ってもらえたと思う」と山口氏は胸を張る。

先進企業から見たブランド価値向上が狙い

 日本IBMがこのようなイベントを開催した狙いは、ズバリ、コーポレートブランディングである。同社は定期的に、自社ブランドが取引先や消費者、社員などにどう見られているかを調査している。約1年前の調査で、IBMが今後の主戦場と想定するクラウドサービスやコグニティブコンピューティングといった分野で、重要なパートナーとなりそうな企業からのIBMブランドの評価が、ライバル企業よりも低いことが判明した。そこで、「こうした未来を切り拓く技術の分野でもIBMが高い実力を持つことを示す場を設けることを考えた」(山口氏)。

 それが今回のイベントであり、日本IBMと協業する可能性がある企業から見たIBMブランドの価値向上につなげる狙いがあった。また、新人採用などリクルーティング活動へのプラスの効果も期待した。IBMは今やBtoB(企業向け)の会社だが、一般消費者などから一定以上のブランド認知があることも重要と考えているようだ。
 
 ブランディングの手段としてソードアート・オンラインを選んだのは、作品中にクラウドサービスとコグニティブコンピューティングを駆使するVRMMOが登場することが1つ。もう1つ、「コアなユーザー層がIBMブランドの価値を知らしめたい層と合致していた」(山口氏)ことも大きかったという。一般にゲームのコアユーザーは10~20代が中心だが、このゲームのユーザーの平均年齢は30代前半。職種はITエンジニアが多く、テクノロジーに興味を持つ人の割合も高いという。

 そこで、版権窓口となるKADOKAWAと交渉し、ソードアート・オンラインの世界観を損なわないように原作者やKADOKAWAに監修してもらいつつ、1年かけてコンテンツを制作した。今後、このコンテンツをIBMのプライベートイベントなどで体験してもらうことも計画している。