福岡でタクシー会社や不動産会社などを展開する大稲(だいとう)グループは、中国・上海に本社を置くインバウンド支援のサイバーグループと提携。中国・台湾からの訪日観光客向けに、中国版LINEとも言われる「微信(ウィーチャット)」のシェイク機能を活用した、ユニークなO2O(オンラインtoオフライン)施策を始める。
5月3日と4日に開催される「博多どんたく港まつり」に合わせて、地元の観光情報や、飲食店・小売店などの割引クーポンを、微信のアプリ経由で観光客のスマートフォンに配信。観光客が配信された情報やクーポンを見て観光地を回ったり、飲食店や小売店で食事や買物を楽しめるようにしていく計画だ。
割引クーポンの配信などには、サイバーグループが今年2月から日本で提供している「Cyber Shake」というサービスを利用する。元々、微信にはスマートフォンを振ると、同じようにスマホを振った微信ユーザーが画面に表示されるシェイクと呼ぶ機能がある。
サイバーグループはこの機能を応用して、ビーコン端末の近くでスマホを振ると、その端末からさまざまな情報がスマホに配信されるCyber Shakeを開発した。

大稲グループは、このCyber Shakeを使った施策に必要になるビーコン端末を、福岡市役所や福岡商工会議所、地元の商店街などと協力して、飲食店や公共施設、タクシーの車内などに設置しようとしている。そしてビーコン端末の場所が観光客に分かるように「Cyber Shake」と書いたステッカーなどを貼っておく予定だ。
Cyber Shakeでは、サービスを観光客がどこで利用したかという位置情報も収集できる。このため、大稲グループ代表の稲員英一郎氏は、「施策の終了後には、Cyber Shakeで集めたデータを分析して、この施策に参加してくれた飲食店や商店街などが、さまざまなマーケティングに生かせるようにしていきたい」と話す。
実はサイバーグループは今年2月、同様の施策を東京・渋谷でも実施している。同社アジアパシフィック代表のアラン・ユー氏は、「来年も渋谷で類似の試みを実施することが決まった」と話しており、参加した小売店などの業績に、一定の効果はあった模様だ。

大稲グループは先行した渋谷の結果を踏まえ、地元の商店や企業が潤うように、サービスの細部を徹底的に見直す腹づもり。「日本の観光地の人々と日本を訪れる中国人が、お互いの考え方と文化を理解できるようになれば、観光地が喜ぶリピーターが増えて長期的な関係が築け、ビジネスとしても伸びる。今回の取り組みは、そのための第一歩」と稲員氏は語る。今回の試みが成功すれば、サイバーグループとの提携を強化しつつ、訪日中国人観光客に対する支援サービスを質量ともさらに拡大していく考えだ。