米Airbnbにとって、ホストとゲストは一枚のコインの表裏のような存在だ。同社は2028年までに年間で10億人のゲストを迎えるという高い目標を掲げ、その達成のためのロードマップを発表した。

目標達成の鍵となるのはコミュニティープラットフォームである。Airbnb共同設立者のブライアン・チェスキー氏は、「スーパーホスト」プログラムと「スーパーゲスト」プログラムの2つに積極的な投資を行うことを明言した。
このスーパーホストプログラムは、優れたホストのコミュニティーへの貢献を表彰するために2009年に始まった制度である。チェスキー氏は、「スーパーホストは象徴的な存在」と述べ、ケニアのナイロビに住む女性を例に挙げた。ウェディング業界で10年働いてきたパメラがAirbnbのホストになるきっかけは、家族の滞在先に困っていた花嫁の不満を聞いたこと。倹約をして家を買い、わずか数年で通算1000人以上のゲストを迎えるまでのホストに成長した。
スーパーホストの基準を見直し
この女性を始め、スーパーホストプログラムには、現在全世界で40万人のホストが参加している。Airbnbは、2018年2月からスーパーホストプログラムにおけるホストの基準と特典とを見直した。新しくなったスーパーホストの認定基準は厳しい。「ゲストからの評価が4.8以上」「24時間以内に回答する確率が90%以上」「年10件以上の宿泊受入実績」「ホスト都合による直前の予約キャンセルがゼロ」というものだ。
従来からAirbnbは、優良ホストであることを示す「スーパーホストバッジ」や、ゲストが検索した際にページの上位に表示させる「検索フィルター」などの特典を提供してきた。それに加えて、2018年中に新しい特典を追加し、全部で19の特典を用意する。このうち、「Airbnb Plus」の参加候補に優先的に招待されることは、ホストのビジネスに最も大きな影響を及ぼすことが予想される。
Airbnb Plusは、清潔さ、快適さなど、100以上の項目審査で、カテゴリーが要求する「プラスアルファ」を確認されたリスティング(Airbnbに登録されている宿泊が可能なスペース、部屋、家のこと)だけが認定を与えられるものだ。1泊当たりの平均 価格帯は100~200ドルと、ホストにとっては高単価のカテゴリーだ。Airbnb Plusは、現時点ではまだ世界13都市での展開に留まるが、2018年中に東京、大阪、京都を含む50都市以上に拡大する計画がある。
追加特典の中には、ビジネスの拡大を目指すホストのマーケティング活動を支援するものも含まれる。2018年2月から、ゲストが目にするWebサイトやメールで、スーパーホストのリスティングは優先的に表示される。さらに、2018年中をめどに、年間ボーナスのオプションとして、自分のリスティングをより魅力的に見せるためのカメラマンによる写真撮影が選べるほか、ブランディング 「スーパーホストプログラム」には40万人のホストが参加のためのカスタムURLの設定、オンライン広告での新規顧客へのリーチ、リスティング表示の効果を判断するためのテストツールの提供、ビジネス拡大に向けた特別ウェビナー、より迅速なサポート体制の提供など、優良ホストのビジネスに手厚い特典の提供をAirbnbは検討している。新しくなったホストプログラムの狙いは、優良ホストのリスティングがより多くのゲストを引きつけられるよう、コミュニティーの発展を支援することだ。
ホストのビジネス基盤を支えるのがゲストだとしたら、優良ゲストに特典を提供するプログラムもあって然るべき。Airbnbでは、2018年の夏に1万人のゲストが参加する「スーパーゲスト」プログラムのトライアルを予定している。このテストでの改善を経て、プログラムの全面展開は2018年中になる見通しだ。
このプログラムは、一組の夫婦のフィードバックを基にしたとチェスキー氏は話す。マイケルとデビーの夫婦は4年前に完全に仕事を辞め、住んでいた家を売り払った。以来、彼らは世界68か国を周遊しながら、毎週違ったAirbnbを泊まり歩く超ヘビーユーザーになった。今もAirbnb生活を続ける夫婦は、インターンを志願し、「Airbnbがもっと使いやすくなるために」とたくさんのアイディアをくれたという。

チェスキー氏はTwitterを使い、大手ホテルチェーンが展開しているようなメンバーシッププログラムをAirbnbがやるとしたら、どんな特典を望むかを尋ねてみた。すると、「冷蔵庫の中に食べ物を入れておいてほしい」から始まり、「空港から/までの送迎」「フィットネスジムへのアクセス」「コンシェルジュサービス」などの意見が寄せられたという。さらに、優良ゲストに特典を提供するとしたらどうしたいか、ホストにも意見を聞いている。ホストからの要望で多かったのは、リピーターの獲得につながるリスティングの宿泊割引や、直前の予約受付などに関するものだったとチェスキー氏。
スーパーゲストプログラムの具体的な特典がどうなるかは現時点では不明。だが、チェスキー氏としては、特典を旅全体に関連付けたものにし、理想的なゲストプログラムにする意向だ。「スーパーゲストプログラムは、新しい旅行スタイルのパスポートになる」とチェスキー氏は新プログラムの目指す姿を述べた。
フィードバックで随時改善
2つのプログラムの内容から分かるのは、Airbnbのグローバルコミュニティーをより良いものにする原動力は、ホストとゲスト両方からのフィードバックということ。本社プロダクト担当ディレクターのクララ・リャン氏によれば、「ブライアンがTwitterで大勢に質問したように、私たちはできるだけ多くの人々の意見を聞くようにしている。対面での機会だけでなく、ソーシャルメディアでのコメントやアンケート調査など、あらゆる機会を活かし、ホストやゲストが何を求めているかを理解したいと考えている」という。
Airbnbにとって日本は重要な市場。Airbnb Japan代表取締役の田邉泰之氏は、コミュニティーは、どんなに構成人数が増えても強固なものにしていかなければならないし、進化し続けるものでなくてはならないとし、「日本にはまだ開拓されていない観光資源が残されている。自治体や企業と共存し、正しい経済効果を生み出すコミュニティーを設計していきたい」と話す。
チェスキー氏は、「スーパーホストとスーパーゲストは、Airbnbのコミュニティープラットフォームを両面から支える存在」と述べ、Airbnbがみんなのためのものであるよう、持続的な発展に向けて投資するビジョンを明確にした。