伊勢丹のカリスマバイヤーとして「バーニーズ・ジャパン」「解放区」「リ・スタイル」などの事業やブランドを立ち上げ、次いで福助社長やセブンアンドアイ生活デザイン研究所社長、ファッション業界人として初の参議院議員などを務めた藤巻幸大氏が54歳の若さで亡くなって、明日で3年が経つ。
日本をテーマにした、職人の心意気が感じられる珠玉の逸品を並べた百貨店を作りたい、という藤巻氏の夢を具現化したEC(電子商取引)サイト「藤巻百貨店」は、藤巻氏の片腕だった中村亮氏が藤巻氏亡き後も運営を担い、売り上げを伸ばしている。


そんな藤巻百貨店が、FacebookのMessengerアプリからbotによる自動応答で買い物ができるサービスを始めた。Messengerのトーク画面上で、ギフトの用途や相手のイメージ、予算などを対話スタイルで選択肢から選んでもらい、お薦めギフトを提示するサービスを昨年11月に開始。今年1月の第2弾では、藤巻百貨店が取り扱う商品の中でも人気No.1のバッグメーカー「DOUBLELOOP(ダブルループ)」のセミオーダーバッグを、実際にシュミレーションしながら注文できる機能を追加した。
同サイトを運営するcaramo(カラモ、東京都渋谷区)社長の中村亮氏は、「藤巻百貨店の主な顧客層は、日々の暮らしにちょっとした豊かさを求める30代後半から50代の男女。Facebookページには24万人のファンが付き、商品を紹介した投稿にも良い反響があるため、Messengerを介して新しい買い物体験を提案したい」と導入の狙いを語る。
開始1カ月で10万メッセージ超
ユーザーは、Messengerアプリを起動して「藤巻百貨店」を検索。スタートボタンをタップすると、「ギフト選び」と「DOUBLELOOPカスタム」のメニューが現れ、買い物がスタートする。DOUBLELOOPでは、バッグの形、ベースカラー、ベルトについてそれぞれ示された選択肢から好きなものを選ぶと、好みの組み合わせが写真で表示される。Messenger上でシミュレーションしながら買い物を楽しめる。
一方のギフト選びでは、「用途から探す」と「相手のイメージから探す」の2つの探し方がある。前者の場合、「手みやげ」「外国人向けのお土産」「昇進・昇格祝い」「結婚祝い」「新築祝い」「定年・退職祝い」などの選択肢が表示され、続いて予算を選ぶと、見合ったギフトを提案される。後者の場合、贈る相手について、「おしゃれで色気がある」「お酒の種類に限らず飲むことが好き」「持っている小物にセンスを感じる」「テーブルウェアにも興味がありそう」などの質問に、「とてもそう思う」「そう思う」「普通」の3段階で回答していくことで、相手に合ったギフトがセレクトされてくる。
中村氏は、「開始1カ月で対話数が10万メッセージを超え、手応えを得た」と成果を語る。何か気の利いたプレゼントを考えている際、Messengerの履歴に藤巻百貨店の名前があれば、ふとタップして対話型botのやり取りから自分では思いつかなかった商品に出合える可能性がある。決して有名ではないがいいモノをつくる職人の想いやこだわりが詰まった、日本を感じさせる商品との出合いの場を創出したいという藤巻氏の願いは、このチャットbotにも息づいている。