クレジットカード事業のオリエントコーポレーション(オリコ)は2月9日、カード会員向けポイントモール「オリコモール」のスマートフォン向けアプリ版の提供を始めた。従来のブラウザー版とは大きく異なる仕組みを採用し、サービスの利用頻度が大幅に向上した。サービス利用から1週間後の再訪問者数を比較した場合、アプリ版はブラウザー版と比較して2倍超も多い。アプリ版の提供でスマホ利用者数を増やし、2017年度中にオリコモールにおけるスマートフォン全体の利用比率を5割まで高めたい考えだ。

再訪問者数がブラウザーの2倍というアプリ
再訪問者数がブラウザーの2倍というアプリ

 オリコモールは、カード会員が同モール経由で提携する通販サイトを訪れ、オリコカードを利用して商品を購入すると、通常より高い還元率でポイントを得られるサービス。同モールを積極的に利用するカード会員は、他のカード会員と比べてカード利用額が高まるなど、優良顧客の囲い込み施策として機能してきた。

 ところが従来のブラウザー版は、複数の課題が表面化し始めていた。1つ目の課題は会員を誘導する通販サイトの偏りだ。オリコは600超の通販サイトと提携して、モール上に載せた提携サイトのロゴや、旬の商品などを使った広告画像などから、提携サイトに送客してきた。ただ、ロゴや画像だけでは誘導先の魅力を伝え切れず、結果的に著名なサイトに送客の偏りがやや見られた。もう一点は誘導先の課題だ。ブラウザー版ではモールから提携サイトのトップページに誘導しており、そこから利用者が商品を検索するなどして目的の商品を探す必要があった。この手間が、急速に利用が広がるスマートフォンでは面倒と認識され、離脱率が高まった。

直接、商品検索できる機能を搭載

 そこでアプリ版では、提携先の商品をモール上で検索し、目的の商品ページに直接誘導する仕組みを採用した。開発に当たってはデジタルガレージの協力を得て、商品データベースを整えることでサービスを実現した。「オリコモール経由で購入できる商品の8割以上は既にカバーできている」(カード推進グループCRM開発推進部Webマーケティングチームの今井明彦氏)。カード会員はアプリに会員IDやパスワードを入力してログインし、利用する。アプリ上で商品を検索して、気に入った商品ページから提携サイトを訪問して購入すると、サイトごとに設定された条件でポイント付与の優遇が受けられる。「アプリ内で商品を決めてから提携サイトに誘導するため、CVR(コンバージョン率)はブラウザーと比較して高い傾向にある」と今井氏は言う。

 アプリの利用頻度を高めるため、利用データと連動したプッシュ通知機能も実装している。例えば、アプリでは気になる商品をお気に入り登録できる機能を持つ。会員がアプリ上でお気に入り登録した商品の値が下がったり、ポイント還元率が高まったりした時、自動でプッシュ通知を配信し、購入を促している。ブラウザー版では利用回数が月1回程度の会員が多かったのに、アプリの利便性向上やプッシュ通知の活用などで、アプリ版では「2日に1回利用するような会員が多く、利用頻度が大きく高まっている」(今井氏)。

 また、今まで取れなかった顧客データも取得できるようになった。カード会社は今まで、どのサイトでいくら使ったというカード利用情報は持てても、どの商品を購入したかといったデータは持てなかった。アプリ経由であれば、最終的に商品ページへ誘導するため、どんな商品を購入したといったデータも取得可能になった。こうしたデータも活用して、顧客へのパーソナライズした情報発信を実現し、利用頻度をさらに高めることを狙う。

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