日銀がマイナス金利政策を導入して1年あまり。住宅ローン金利は史上最低水準にある。目安として、「金利差1%以上、借入残高1000万円以上、借入期間10年以上」なら借り換えメリットが出るとあって、銀行が週末に開く住宅ローン相談会は盛況なようだ。

借り換えコンテンツの充実のほか、検索結果からの誘導にもりそなは注力
借り換えコンテンツの充実のほか、検索結果からの誘導にもりそなは注力

 「ウチは借り換えメリットが出るだろうか」「どこの銀行にするか」──。そんなときにアクセスするのが銀行各行のWebサイトにある住宅ローン借り換えページ。サイトやコンテンツの出来栄えは、問い合わせおよび契約に直結する。Webマーケティング支援のメンバーズの子会社で、共創マーケティング・コミュニティーを構築するエンゲージメント・ファースト(東京都中央区)が、住宅ローン借り換え分野のスマートフォン向けサイト・コンテンツと顧客電話応対の両チャネルについて顧客体験調査「CXサーベイ」を実施したところ、スマホサイト・コンテンツでりそな銀行がトップ評価だった。

 調査は、メガバンクやネット銀行など主要8行を対象に、2016年6~7月に実施した。「38歳、既婚、共働き、5年前に築7年の中古マンションを固定金利2.5%で購入し、月々の返済額は約10万円、残り約20年で約2000万円の返済が残っている」というペルソナを設定。固定金利で月1万~2万円返済額が減らせるかどうか、どのような書類や手続きが必要で、結論が出るまでどのくらいの日数を要するか、といった疑問の解決を目的に、「銀行名 住宅ローン」で検索した際のアクセシビリティやコンテンツ充実度、要求解決度など6カテゴリー全15項目について、調査員が2~4段階評価で採点した。

エンゲージメント・ファーストが実施したチャネル別顧客体験調査の結果
エンゲージメント・ファーストが実施したチャネル別顧客体験調査の結果

 結果、調査時点の評価はりそな銀行がトップで、次いで新生銀行、みずほ銀行の順だった。りそなは、借り換えで負担減になる事例の紹介や、他行より優位なポイントを「りそな住宅ローンが選ばれる理由」として8点挙げるなど、「知りたい」に応えるコンテンツでリードしていた。金利一覧をタップするとパソコン向けサイトが表示されるなど、スマホ対応が不完全な銀行が多い中、りそなはレスポンシブルWebデザインでスマホ対応している。

メールとLINEにワンタップで送信

 りそなは借り換えコンテンツのみならず、流入経路として多い検索連動型広告からのランディグページでも改善を重ねていた。以前はネット銀行を参考に画面上でより目立つ配色を優先していたが、1年半ほど前にABテストを重ねて、店頭のポスターやチラシと一体感のあるデザインに変更している。同行コンシューマービジネス部担当マネージャーの梅原浩二氏は、「ファーストビューで、Web申し込み限定プランの変動金利と10年固定型金利の2つを訴求しているほか、借り換え利用顧客に実施したアンケートから、当行を選んだ理由として多かった項目を4つのメリットとして打ち出している。移動中などにスマホで情報収集していることを想定して、後で検討しやすいよう、メールとLINEにワンタップで送信できるボタンも設置した」と説明する。

 顧客電話応対については、実店舗がないネット銀行と、店舗数が少ない新生銀行が優勢だった。同調査を実施したエンゲージメント・ファーストCXサーベイ部門部長の萩谷衞厚氏は、「メガバンクの電話応対は店舗への誘導になりがち。Webでの訴求ポイントとオペレーター対応の整合性が取れていないケースも目立った。寄せられる質問や疑問点を基にWebコンテンツを改良し、オムニチャネル視点で課題解決度を高める必要がある」と語る。こうした改善は、借り換えに限らず他の金融商品、そして他業種にも通用しそうだ。

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