動画広告企画のキャンペーンページ
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 ニキビケア用品ブランド「プロアクティブ」を展開するガシー・レンカー・ジャパン(東京品川区)が3月7日から、動画広告の活用に本腰を入れて取り組み始めた。動画は見込み客が商品を購入するまでの、カスタマージャーニーに合わせたシナリオ設計に基づいたもの。その内容は、新たな広告キャラクターとして起用した、人気アイドルグループモーニング娘。'16のメンバー、工藤遥さんのインタビュー動画だ。実は彼女は以前からプロアクティブを愛用する“顧客”だ。ニキビの悩みに対してプロアクティブがどのような効果をもたらしたか、身をもって体験している。

 動画広告に取り組む理由を、ガシー・レンカー・ジャパンのデジタルマーケティング部の藤原尚也シニアマネージャーはこう説明する。「今回のキャンペーンは10代がターゲット。そうした層は既に『YouTube』などの動画サイトを利用し慣れている世代。文章よりも、気軽に見られる動画の方が、商品の魅力などが伝わりやすいと考えた」。

単なるバイラル動画にはしない

 動画広告を活用したキャンペーンを実施する上で、ガシー・レンカーが狙うのは、既にプロアクティブ製品へのニーズが顕在化した消費者だ。動画広告を活用する際、テレビCMの延長線として捉え、テレビCMが届きにくくなっていると言われる、主に若年層へのリーチを補完する目的で使う企業は多い。また、ソーシャルメディア上で話題を呼ぶバイラル動画を制作する企業も少なくない。ただ、こうした施策はリーチを取って、潜在層にブランドを訴求することが狙いだ。

 ところが、ガシー・レンカーはダイレクトマーケティングという事業の性格上、動画広告においても売り上げへの貢献をよりシビアに求められる。「単にソーシャルメディア上で話題になり、再生回数だけが増えても、購買への影響はあまりないケースが多い。それは、その後の売り上げにつなげるためのプロセスが作れていないからだ。そのため、まずは動画広告から購買につなげる事例を作ることが先決と判断した」(藤原氏)。

 購買への貢献度のより高い動画広告を制作するために、ガシー・レンカーは、顕在顧客のマーケティングフェーズを6つの段階に分けて、その段階に合わせたシナリオを描いた。まず、ニキビに悩む初期段階の「悩み」「原因」。そして、具体的な解決策を探す段階の「解決策」「体験談」。そして、実際に購入を検討し始める「試す」「買う」だ。このシナリオに沿って、工藤さんのインタビュー動画を制作した。工藤さんも、元をたどれば思春期にニキビで悩み、プロアクティブを使い始めた経験を持つ。そのリアルな体験談を語ってもらうことが、見込み客には響くと考えられた。

 工藤さんのインタビュー動画は、そのシナリオに沿って質問を投げかける構成になっている。例えば、「悩み」では以前、ニキビに対してどのような悩みを抱えていたかといったことを聞き、「解決策」では具体的にどんな対策を講じたのかといったことについて尋ねた。「買う」の段階では、プロアクティブの商品を使うことに悩んでいる人へ背中を押す一言をもらった。いずれも台本は用意せず、あくまで工藤さんの体験談として、ニキビに悩んでいた頃の写真も交えながら、過去の悩みやプロアクティブを実際に使った感想などを赤裸々に語ってもらった。

 動画は6分に及ぶため、広告への活用では見込み客が置かれているフェーズに合わせて、最適な箇所を切り取って再編集する。全部で6つの動画広告のクリエイティブを制作。広告事業のFIVE(東京都渋谷区)が提供するスマートフォン特化型の広告ネットワークや、ドワンゴの動画投稿共有サイト「niconico」などで、若年層をターゲットに広告として配信する。

顕在顧客のマーケティングフェーズを6段階に分け、それぞれに合わせたシナリオを描いた
顕在顧客のマーケティングフェーズを6段階に分け、それぞれに合わせたシナリオを描いた

コンテンツマーケとも連携

 また、今後はこれまで実施してきたコンテンツマーケティングと連動した、リターゲティング広告の配信にも取り組む。ガシー・レンカーがコンテンツマーケティングを目的として運営しているニキビの情報サイト「ニキペディア」には、ニキビに関するさまざまな記事が掲載されている。このニキペディアに掲載されている記事を、動画制作に当たって描いたカスタマージャーニーのシナリオの6つのフェーズに割り振る。そうすることで、読んでいる記事から訪問者がどのマーケティングフェーズにいるかが推測できる。こうした分析をした上で、ニキペディアの訪問者のマーケティングフェーズに最適な動画広告を、リターゲティング広告として配信する。

 広告効果については、投じた広告費に対するCPO(注文獲得単価)で測定する。ただし、YouTubeなどの動画サイトで再生前に広告が表示されるインストリーム型の広告の場合は、あくまで動画閲覧が目的のため、動画から直接購入に結びつかないケースも多い。そこで、グーグルとは動画閲覧後に「Google」経由で訪れた場合、それも動画広告の効果として計測するアトリビューション分析の実施などについて協議を進めている。

 実は、ガシー・レンカーは動画広告の実施に先駆けて、工藤さんが登場する動画を、1月にティザー的にLINE上で配信した。「どの程度、ソーシャルメディア上で話題につながり、サイト訪問や売り上げが増加するかを検証したかった」と藤原氏は狙いを語る。これは、広告主の動画の閲覧を条件に、LINE上の仮想通貨「コイン」を付与する広告商品を活用したもので、10万回の視聴回数を保証するメニューで出稿した。

 広告配信に当たっては、あえて事前の告知は一切しなかった。工藤さんのファンだけで、動画広告の再生回数が消化されてしまうことを避けるためだ。配信した動画に工藤さんが登場するのは、わずか数秒。ところが、それがかえって工藤さんがプロアクティブのCMに出演するのではないかという憶測を呼ぶ形となり、すぐにネット上では大きな波及効果をもたらした。「ブランド名検索でのサイト訪問者も、前週比で113%」(藤原氏)になるなど、既に大きな手応えを得ている。

 布石を打っておいたため、広告配信当日の3月7日にはTwitter上で「プロアクティブ」がトレンドワードに入るほど大きな話題につながった。これを売り上げに結び付けられるかどうかが、次の焦点になる。